第7章 葛藤
「そんな日が、くるなんて…思えません、」
「…そうだよね、今は思えなくても、多分だけど、大丈夫。いつか絶対、くるから。」
「……っ、」
乙骨のどこまでも真っ直ぐで温かい眼差しに、胸の奥に固くつかえていた冷たい何かが、じわじわと解けていくのが分かった。
生きていてはいけない存在だと、自分自身を呪い続けてきた。両親を奪い、大切な恵まで傷つけそうになった自分を、世界の誰よりも自分が許せなかった。
けれど、同じ闇と痛みを抱え、それを乗り越えてきた目の前の青年は、そんな自分を一度も否定せず、ただ優しく未来を信じてくれている。
(私が……私の、味方に……)
ボロボロと、大粒の涙が目から溢れ出た。
拭うこともできず、ボタボタと膝の上に落ちていく涙。それは今まで流してきたどの涙とも違う、暗い孤独の中からすくい上げられたような、温かく切ない涙だった。
乙骨は何も言わず、ただ香久夜が涙を流すのを静かに待ってくれていた。
香久夜はしゃくりあげながら、溢れ出る涙を溢れ出るままにして、何度も、何度も、小さく頷いた。
「……はい……っ、はい……っ」
かすれた声で答える香久夜の頭に、乙骨の手がそっと重ねられる。
「……うん。一緒に、頑張ろうね」
自分の存在を少しだけ許されたような心地がして、香久夜は泣き笑いのような表情で、乙骨に向かって深く頷き続けたのだった。