第6章 満月の夜
「……そっか」
五条の口から、冷ややかな吐息が漏れた。
(嘘だね。わかりやすい)
五条は、香久夜の拍動の乱れも、脈拍の上昇も、微細な呪力の揺らぎも全て捉えていた。
香久夜が何か重大な記憶を隠し、自分に嘘をついたことを、五条は一瞬で見抜いた。
そして、その嘘の裏にある「誰か」の影を感じ取った瞬間、五条の胸の奥で、苛立ちの火種がバチッと跳ねた。
「今回が、初めてなんだね」
五条の声のトーンが、わずかに低く落ちる。
タオルを滑らせる手が、香久夜の服の隙間を通って彼女の腰元へと滑り落ちた。
「ひっ、あっ、!先生、そこはっ」
過敏になった肌に直接触れる温かいタオルの感触と、五条の指先の圧力。
腰が反応してしまう。
香久夜はたまらず背筋を反らし、小さく甘い悲鳴を漏らしてしまった。必死で隠そうとしていた火照りと身体の反応が、ついに決壊して露わになる。
「何? 敏感になってるの?」
「違っ、違いますっ! お願いです、もう、大丈夫ですから、っ」
「やめないよ。君、汗すごいもん。きれいに拭いてあげなきゃ」
五条の手つきから、先ほどまでの「優しい先生」の丁寧さが消え始めていた。
あえて香久夜の弱い部分、肌の過敏な場所をタオル越しになぞり、彼女の反応を確かめるような意地悪で苛烈な手つきに変わっていく。
「い、いじわる、」
香久夜は、力なく五条の手を押し除けようとしながら、涙で潤んだ瞳で、上目で睨んだ。
「何その顔、煽ってんの?」
「ち、ちがっ、!」
「…あのさ、さん。僕、君のこと助けたくてここにいるんだよ?なのに…先生に嘘ついて、そんな顔で煽るんだ」
五条は手にした濡れタオルを床へ放り捨てると、香久夜の華奢な手首を掴み、ソファの背もたれへと静かに押し付けた。
乱暴ではない。けれど、そこに含まれる無下限の圧力と大人の体格差は、香久夜の逃げ道を指一つ分すら残さず、完全に塞いでいた。
「悪い子だなぁ、ほんとに。」
前髪の隙間から、その青が睨むようにのぞいていた。