第6章 満月の夜
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「……やれやれ、想像以上だね」
夜明け前、静まり返った隠れ家に戻ってきた五条悟は、寝室の扉を開けた瞬間、思わず苦笑交じりの息を吐いた。
シーツは汗と荒れ狂った呪力の残滓でぐしゃぐしゃに乱れ、その中央で互いを力任せに抱きしめ合ったまま、二人は深く眠りこけていた。
香久夜の過剰な呪力を限界を超えて受け止めた恵は、全身の血管が黒く浮き上がり、顔色を蒼白にして失神するように眠っている。
首筋から腕にかけて伸びる【印】は、まるで生き物のように禍々しい黒に染まり切っていた。
五条は目隠しを少し押し上げ、蒼い瞳で二人の状態を冷静に観察する。
「恵の奴、自分のキャパシティを忘れて全部呑み込んじゃったか。……この状態で今夜の『満月』を迎えたら、恵の精神も肉体も完全に焼き切れて壊れちゃうね」
京都校の裏で蠢いていた連中への牽制と上層部への尋問は一通り済ませたものの、香久夜の体質の変化は待ってくれない。今夜は狂乱の満月だ。
五条はベッドに近づくと、恵の肩を軽く揺り動かして強引に意識を浮上させた。
「……ん……五条……先生……?」
「おはよう、恵。悪いけど、今すぐ起きて」
「……あ……は……っ!?」
飛び起きようとした恵だったが、全身の痛みに顔を歪めて倒れ込みそうになる。五条はそんな恵の首根っこを掴んで立たせると、冷淡だが確かな声音で命じた。
「お前はもう限界だ。今夜の満月でお前が相手をしたら、二人まとめて死ぬよ。歩けるなら今すぐ高専へ行って祥子に傷を治してもらって。……それから、外で少し呪力を使って暴れてくること。体内に溜まったの呪力を吐き出さないと、お前自身の術式が狂う」
「っ……! でも、今夜のは……! 俺が……!」
「僕がやる。……のためにも、今は休んで。」
五条の目隠しの奥から放たれた絶対的な圧に、恵は言葉を詰まらせた。自分の無力さと悔しさに歯を食いしばりながらも、恵は倒れるように部屋を去っていくしかなかった。
部屋に残された五条は、ベッドの上で浅い呼吸を繰り返す香久夜へと視線を向けた。