第6章 満月の夜
「んむ……っ、ふあ……っ……恵、くん……っ!」
恵くんの手が私の後頭部に回ると、力任せに私を覗き込み、そのまま激しく唇を重ねてきた。
言葉にならない吐息が混ざり合う。
恵くんの熱い舌が私の口の中に飛び込んできて、私の舌を絡めとり、力強く貪ってくる。昼間と同じ、私の血の味と、恵くんの血の味が口の中で混ざり合って、甘くて痺れる毒みたいに脳を溶かしていく。
ふと、頭の中に綺麗な幻覚が見えた。
月明かりの下の海辺で、血に塗れた私が恵くんに抱きつき、泣きながら恵くんの首に手を回している幻影。わたし、海なんて見たことないのに。
怖くなって、恵の背中に回した腕で強く抱きしめる。
(……一人に、なりたくない、っ)
声にならない叫びをあげながら、私は恵くんの腰に脚を回し、さらに深く彼にしがみついた。
私の体内で暴れていた凶暴な呪気が、接吻と肌の密着を通じて、流星みたいに恵くんの中へと吸い込まれていく。
恵くんの首筋の印が、どんどん濃い黒に染まっていくのが見えた。
恵くんが私の器になってくれている。私の痛みを、私の恐怖を、恵くんがその全身で受け止めてくれているんだ。
「ん……っ……ふ……あ……っ」
どこまでが自分で、どこからが恵くんなのか分からなくなる。ここは誰の家だとか、誰かが近くにいるかもしれないなんて、どうでもよかった。
ただ恵くんの体温を感じていたくて、私たちは互いの肌を貪り合い、傷口を舐め合い、意識が尽きるまで、何度もお互いの唇を奪い合い続けた。