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呪術回戦ー八月の忌み子ー

第6章 満月の夜


五条が隠れ家を立ち去り、家入の手当ても終わったあと。
静まり返った五条家の結界の中。

香久夜の胸の奥は呼吸をするたび、熱い鉄を流し込まれたように熱かった。


「あっ、恵、くん、っ熱い、たすけて、っ」


静寂に包まれた暗い寝室で、ベッドに横たわる香久夜が熱っぽいうなされ声を漏らしていた。

硝子さんの手当てと反転術式によって、皮膚の打撲痕や口元の傷はきれいに塞がっていた。だが、内側で渦巻く莫大な呪力の奔流は、熱病となって彼女の華奢な肉体を容赦なく疼かせていた。



「、大丈夫だ。俺はここにいる」

俺は香久夜の傍らに腰掛け、汗ばんだ彼女の手を固く握りしめた。触れた肌から、ずっと温かい呪力が、俺に流れ込んでいて、俺の体温を上げた。


「……?」


香久夜は虚ろな目で俺の頬に手を伸ばす。


「恵く、冷まして、っ」

そう言ってその唇を重ねた。


香久夜の体内で溢れ返った呪力が、身体へ流れ込んでくる。その度に首から右腕にかけての印がズキっといたんだ。

視界が明滅する。俺自身、昼間の血の共有で香久夜の過剰な呪気を受け止めた影響で、体力の限界を迎えていた。



だが、俺の苦痛など意にも介さず、熱に浮かされた香久夜の瞳が、どこか空ろな光を宿して俺を見つめた。


「恵、くん……、あつい、っ肌、にあたると、苦しいの、っ」


うわ言のように呟きながら、香久夜は自分自身の胸元へと手を伸ばした。
着せられていた薄手のシャツのボタンを、震える指先でひとつ、またひとつと力任せに外していく。


「おい、…!? やめろ、何して——」


慌てて止めようと俺が手を伸ばした時には、すでにシャツは肩から滑り落ち、生白く華奢な胸元と、なだらかな肩のラインが夜の闇の中に露わになっていた。

汗で肌に張り付く黒髪と、赤く上気した頬。そして、呪力の熱に当てられて艶っぽく揺れる瞳。


「恵くん、触りたい、っ、あついの、持っていって、っ」


香久夜は俺の腕を掴むと、力任せにベッドの上へと引きずり倒した。
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