第5章 暴走
ドゴォン、パラパラ……と崩れた瓦礫が落ちる音が響く。
かつて古びた物置小屋があった場所は跡形もなく消し飛んでおり、クレーターのように抉れた地面の真ん中で、ひとつの影が異様な呪気を撒き散らしていた。
「あ……あ……っ……う……っ!」
香久夜だった。
瞳の光を完全に失い、肩を激しく上下させながら、地面でのたうち回っていた。
その姿を目にした瞬間、恵の息が止まった。
丁寧に仕立てられた高専の制服は無残に破かれ、華奢な肩や鎖骨、生白い肌があらわになっていた。
肌には痛々しい紫色の打撲痕が走り、口元からは一筋の血が伝っている。
そして足元には、全身を黒く腐敗させて転がる男の死体と、吹っ飛ばされた人間が気絶している。
(……何があったか……言われなくても、わかる……)
恵の全身の血が、一瞬で凍りつき、次の瞬間にはドロドロとした狂気的な怒りとなって沸騰した。
香久夜の無垢な肌を触り、恐怖で喘ぐ彼女を追い詰め、陵辱しようとした男たちの惨状。香久夜は自分を守るために能力を暴発させ、そしてキャパシティを越えて崩壊してしまったのだ。
「……ひどい有様だね」
恵の後ろから、足音もなく静かに現れたのは五条悟だった。
いつもの軽薄な笑みは一切ない。目隠しの奥の「六眼」で、惨劇の全てを一瞬で紐解いた五条の全身からは、周囲の空間を凍りつかせるような、冷酷で圧倒的な殺気が揺らめいていた。
「……僕の生徒に、ずいぶんなことをしてくれたみたいじゃねぇか。」