第5章 暴走
ズゥゥゥゥゥン……ッ!!!
京都校の校舎全体を揺らす、空気を引き裂くような重低音が響き渡った。
「な、なに今の爆発音!?」
「体育館裏の方からだわ……!」
食堂にいた三輪や真依、西宮たちが一斉に窓の外へと駆け寄る。
空を仰いだ瞬間、全員が絶句した。京都校の静寂な敷地の一角から、黒く濁り切った、そして目も眩むほど禍々しい青紫色の呪力の柱が、天を突くように立ち上っていたのだ。
「……っ! この呪気、香久夜ちゃん……!?」
西宮が息を呑む。だが、その直後——。
現場から押し寄せてきた呪力の衝撃波が周囲に広がった瞬間、現場へ向かおうとした下級の術師たちが「うぐっ……!?」と相次いで倒れ込み、両手で自分の首を強く絞め始めた。
「息が……できない……っ! 呪気が……毒みたいに、全身に回って……っ!」
それは、五感と神経をズタズタに破砕する「完全な拒絶の呪い」だった。甘さなど欠片もない、触れる者すべての生命を無差別に刈り取る暴風。
あまりの威圧感と密度の濃さに、一般の術師たちは現場の数百メートル手前で膝をつき、指一本動かすことすらできなくなっていた。
「ダメよ、近付けない……! 入ったら、魂ごと潰される……!」
真依が冷や汗を流しながら歯を食いしばる。
その絶望的な空気の突風を切り裂いて、一人の男が一切の迷いなく駆け抜けていった。
「伏黒……!?」
恵だった。ただその様相はいつもと違い、首筋から右腕にかけて、刺青のような黒く妖しい【刻印】を激しく脈打たせながら、恵は悪魔のような呪気の暴風の中へと、単身突っ込んでいったのだった。