第5章 暴走
「……おい、こんなところに隠れてたぞ」
暗がりからぬっと現れたのは、三人の男たちだった。高専の制服ではない。
「うっわ、呪力が暴走しかけてんのか、こいつ」
「動けないのか? 哀れな奴。歩く特級呪物が地蔵になってら」
香久夜は恐怖に顔を跳ね上げたが、体内の呪力が乱れすぎて金縛りに遭ったように身体が拒絶を起こす。五感が信じられないくらい敏感になっていく。
男の足跡や息遣いをいちいち認識する。
「……ひ、っ」
「いいか、大人しくしろよ。お前はこれから俺たちと一緒に禪院家へ行くんだ。あんたを1番高値で買ってくれる」
男の一人が乱暴に香久夜の細い腕を掴み上げ、強引に物置小屋の中へと引きずり込んだ。
「や、……やめ、…っ!」
香久夜は必死に声を絞り出そうとしたが、舌が痺れてうまく回らない。
精神的なショックによって体内の呪力制御が完全に崩壊し、莫大なエネルギーが怒濤の勢いで体表へと溢れ出していた。その過剰すぎる呪力の充満は、香久夜の「五感」を尋常ではないレベルまで鋭敏に研ぎ澄ませてしまっていた。
男たちの下品な息遣いが、耳元で雷のように鼓膜を打ち鳴らす。
男の手が服の上から細い肩を掴んだ瞬間、皮膚を焼かれるほど強い甘さが身体中を駆け巡り、香久夜の口から「ひっ……っ!?」と、尋常ではない艶を帯びた悲鳴が漏れ出た。
「っ……あ……! やらぁ…!熱い、おね…がい、」
「お、おい……なんだこの声は……?」
全身の皮膚が刺激に耐えかね、僅かな衣服の擦れですらビクビクと華奢な身体を跳ねさせる。
瞳は涙で潤み、過敏になりすぎた神経が、意図せず男たちを挑発するような甘い喘ぎと震えを生み出していた。
「……おいおい、化け物の癖になんて格好しやがる。漏れ出してる呪力が……甘い匂いまでしてやがるぞ」
溢れ出す香久夜の無垢で莫大な呪力は、術師である男たちの本能と欲望を狂わせる「毒」となって充満し始めていた。