第4章 繋がり
「……ちょっと、触るよ」
五条は静かに言い捨てると、香久夜の目の前に深く膝をついた。
大きな手が伸ばされ、香久夜の服の上から、お腹の少し下——「丹田」の位置へ、長くて熱い指先がそっと触れる。
「ん……っ」
触れられた瞬間、香久夜の喉から小さな吐息が漏れた。道場の隅で見守っていた恵の肩が、跳ねるように強張る。正座した膝の上で握りしめた恵の拳に、痛いほどの力が入った。
指先を滑らせ、鎖骨のくぼみから細い首筋の付け根へと、親指で愛おしむように撫でさする。
「…っ、」
「呼吸、乱さないで」
微かに跳ねる彼女の脈拍と、体表を巡る熱がダイレクトに指先へ伝わってくる。乱してるのが、自分自身の行為だとしても、この美しい体に、五条は触らずにはいられなかった。
(……あぁ、そうか)
六眼の視界が、狂おしいほどの青い光で染まり上がる。
過剰すぎる世界中の情報が雪崩れ込み、生まれながらに世界でたった一人の「最強」として孤独の中にいた僕の眼。
「歩く天災」だの「呪霊を太らせる餌」だのと言われた少女は。
ーーいま六眼に映っているのは、闇夜に浮かぶ満月のように澄み渡った、世界中のどんな宝玉よりも美しい青い光の奔流だった。
(僕のこの眼は……世界を焼き尽くすようなこの過剰な眼は、この子の美しい光を見つけるためにあったんだ)
「……綺麗だよ。僕の眼には、君の呪力が誰よりも、世界で一番美しく見えてる」
吐息が触れる距離で囁く。心の底からでた無自覚な甘い言葉は、嘘偽りのない、本当の言葉だった。