第15章 青の日々 (及川徹)
合宿3日目。
昨日の夜も眠るまで及川がそばにいてくれた。
初めて話しかけたのは私からだった。
中学一年生のとき。
ぽつん、と落ちていた生徒手帳を私が拾って届けた。
及川徹
入学当時から女の子たちが騒いでいたから知ってた。すごく綺麗な顔をしたバレー部の男の子。
初めて会話をしたその日から及川は私を見かけるたびに話しかけてきた。どうしてそんなに構うのか最初は全然分からなくて冷たくあしらったことだって何度もあったのにそれでも及川は私を構った。
いつのまにか絆されて岩泉とも仲良くなって3人でいることが増えた。及川の家で岩泉と3人勉強をしたこともあった。そのまま寝てしまって泊まらせてもらったことも。
狭く、浅く 人間関係を築いてきた私にとって一定の誰かとこんなにも時間を共にするのは初めてだった。
だからだろうか、及川のそばは心地がいい。
昨日は私が眠るまで手を握っていてくれた。
朝起きたら前夜同様及川はいなくて、私はいったいいつのまに眠ってたんだろうか。
素直に好きだと手を伸ばせる及川が羨ましい。
バレーも友達も恋愛も。
大切なものを大切だと言える及川が羨ましい。
私には無いものばかり。眩しすぎる。
だからその手を取れない。
それに私は普通になりたいだけの普通じゃない女の子。及川には相応しくない。
朝起きたら1番初めに薬を飲む。
何種類も何種類も。
ただ喉の奥に流し込む。
最近になって薬の量が増えた。
分かってる、きっと私は長くない。
だから岩泉の誘いにのった。
やりたいことを少しでもやれたらいいと思った。次なんてきっとないから。普通の子が普通に手に入れられる日常を私も体験したかった。それに5日間だけなら大丈夫だから。お医者さんの許可だってちゃんともらった。大丈夫。ちゃんとこなせる。
大切な友達の大切なものを支えられるって素敵なことだ。及川も岩泉も助けてくれるし今この瞬間が私は幸せ。