❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
それ等を見て凪が目を幾度か瞬かせた後、目の前の道具一式と冊子を見比べた。
(本場のバーテンさんには絶対敵う訳ないけど、こんな事滅多に出来ないし)
一つの案が脳裏に閃いた凪が、意を決した様子で一人頷く。カクテルブックに一通り目を通し、目ぼしいページに栞代わりの手近な用紙を挟むとルームサービスをオーダーする電話機の元へ向かった。子供達が寝静まる頃につまみが届くよう手配した後、メニューなどを元の位置に戻す。期待と仄かな緊張を抱いたまま、彼女はそうして光秀や子供達が戻って来るのを待ったのだった。
密かに仕込みをした後、湯浴みから戻った子供達とは入れ替わりで凪も久々の利便性に富んだバスタイムを満喫した。髪を乾かして脱衣所を出ると、ソファーで寛いでいる三人の姿がすぐ目に入る。凪が湯浴みする前に出した林檎ジュースをたいそう気に入ったらしい光鴇が、恐らく二杯目だろうそれを飲んでご満悦な表情を浮かべていた。
「ゆっくり寛げたようだな」
「光秀さんのお陰です。子供達の面倒、見てくれてありがとうございます」
「礼には及ばない。子らとゆっくり過ごすのも久々だ。中々有意義なひとときだったぞ」
声をかけて来た光秀が、とんとんと自身の隣を軽く促すように叩く。座れという意味のそれに従って凪が男の隣に腰掛けると、更にその隣に居た光鴇が林檎ジュースの入ったグラスをローテーブルの上に置き、ずりずりと身を寄せてぴったり母の隣に寄り添った。子供体温が寝間着越しにじんわりと伝わって来て、凪がつい口元を穏やかに綻ばせる。光鴇の更に隣へ座っていた光臣が、ソファーとローテーブルへ向き合う壁に設置されている巨大なディスプレイを指した。
「先程まで皆であのてれびとやらに流れている絵を観ていました」
「そっか、何観てたの?」
「歴史好き五千人に訊く貴方の一押し戦国武将らんきんぐ、とやらです」
(チョイスが何とも言えなくて複雑……!!!)