❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
「ちちうえ、ときもあぼぼたべたい」
「あぼかどとやらか」
「俺も興味があります」
「あ、ちょうどふたつ流れて来たよ」
「あぼぼ、きた!」
凪と光秀がそれぞれひと皿ずつ子供達へと取ってやり、目の前へと置く。玉ねぎのスライスやアボカドが乗っているとあり、光臣は器用に醤油をつけられるが、光鴇はそれが上手く出来ない。手にした寿司を醤油皿へ近付けようとして、上に乗っている玉ねぎが皿へ落下すると明らかにむっとした様子で眉間を顰めた。
「むっ……とき、できない」
「貸してみろ」
「おはし、する?」
「お前が箸を使っては、更に難儀な事になるだろうな」
「上に色々乗ってるしね……臣くんはお兄ちゃんだからやっぱりお箸の使い方上手だね」
「ありがとうございます。混ざっているものを掴むのは慣れてますので」
「あれ、何だか一気に複雑な気持ちになったような……?」
不服そうな光鴇へ父が小さく笑い、皿に置き直したアボカドサーモンの上に玉ねぎのスライスを乗せ直してやる。光秀が箸を使っている様を見て、自身の前に置かれていた箸へ視線を向けるも、さり気なく意識をそこから逸らすよう父が上手く食器をずらした。光鴇が上手に持てないのは仕方ないにしても、さすが父に似て器用な光臣が難なく食べられた様に、凪が感心の眼差しを贈る。果たしてその言い分はどうなのだろう、と内心疑問に思わなくもない彼女がぽつりと零す正面で、幼子が更に眉根を寄せて文句を述べた。
「……ときもおはし、じょうず」
「そうだな。ほら、お食べ」
「あむっ」
頬を膨らませている子供の口元へ、しっかりと崩れていない状態の寿司を差し出すと、躊躇いなく光鴇がそれを頬張った。サーモンの旨味とアボカドのクリーミーな味わい、玉ねぎスライスのさっぱりとした口当たりが合わさって新食感且つ初めて体験する味に幼子が目を丸くした。
「あぼぼ、おいしい!」
「ご機嫌が直ったようで何よりだ」
「鴇くんも好き嫌いしないで偉いね」
「とき、いいこ!」