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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



「米の上に玉子が……」
「ほう…?混ぜるべくもないと言う事か。中々に合理的な食い物だ」
「え、光秀さんそこ……?」

厚切りの玉子がシャリの上に乗っており、細い海苔で巻かれている様を目にした光臣が双眸を丸くする。かっぱ巻き然り玉子握り然り、ある意味混ぜる必要のない寿司の形状に光秀が感心した風な声を出すと、凪がつい突っ込みを入れた。驚きながらも玉子の誘惑に勝てなかった光臣が皿を取って箸で器用に醤油をつける。そうして食べてみると、微かに金色の眸を輝かせた。

(あ、この表情、美味しいんだ)

僅かな変化でも感情が読み取れるのは母親だからなのか。ほんのり甘い玉子と程よく酢が利いたシャリの組み合わせは光臣の舌に合ったらしい。正面では次々にかっぱ巻きを食べ、あっという間に皿を空にした幼子がきらきらと大きな猫目を輝かせる。

「きゅうり、おいしい…!」
「どうやらお気に召したらしいな」
「せっかくだから、きゅうり以外にも色々食べてみてね。あ、光秀さんお茶どうぞ」
「ありがとう。何かお前も食べるといい」

かっぱ巻きは乱世でも作ろうと思えば作れるが、それ以外の寿司ネタは中々食べられるものではない。頷いた幼子が、興味のそそられる皿をじっと見つめる中、凪が席に備え付けられた給湯器で煎れた茶を全員分渡す。色々と世話を焼いている彼女が、まだ何も食べていない様へ光秀が声をかけた。

「そういう光秀さんもですよ。って言っても自分で食べなさそうなので、私が見繕って取ってもいいですか?」
「ああ、だがお前が先に食べてからだ。俺は後で構わない」
「ここは乱世じゃないですから、一緒に食べても大丈夫です。うーん……光秀さんってお魚の好き嫌いないですよね」
「お前も知っての通り、そこまでの関心がないからな」

あくまでも自分を後回しにしようとする光秀に、凪が眉根を軽く寄せて言い切ると、メニューを眺める。好き嫌い以前の問題だと言って肩を竦めた男が、ふと手を伸ばして流れて来た皿を二枚続けて取った。

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