❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
事前にアプリで予約を入れておいた為、この程度の待ち時間で済んだが、そうでなかったならば一時間以上は待ちぼうけを食らっていただろう。
(最初は普通のお寿司屋さんかなって思ったけど、子供達が喜ぶのはこっちだよね。光秀さんも珍しがってるみたいだし)
寿司ネタが美味しいと評判な回転寿司であれば、生魚の美味しさも十分堪能出来る筈だ。サイドメニューも色々と充実している為、魚が万が一苦手な場合でも問題はないだろう。
「食べたいものがあったら流れてるところからお皿ごと取ってもいいし、このタブレットで注文する事も出来るよ。お品書きはここに書いてあるから、食べたいものが流れてなかったら言ってね」
「この流れている皿は店内すべての客席を通っているという事か」
「はい、新しいものも追加されたりして、常にぐるぐる回ってるんですよ」
凪が声をかけると、子供達が興味津々にレーンを見つめる。席の横に張られている品書きには見た事もない寿司が幾つも載っており、それと照らし合わせながら手に取るものを選ぼうとしていた。暫し回っている皿を見つめていると、光鴇の視界に好物である緑色の野菜が映り込んだ。表情を明るくした幼子が喜々として声を上げる。
「とき、きゅうり!きゅうりたべたい!」
「臣、ちょうど後ろから流れて来ているぞ」
「あにうえ、ときのきゅうり、とって」
「きゅうり……これの事か。米の中に巻かれているとは珍妙な……」
レーンは光臣と凪側から光鴇、光秀側へとゆっくり流れている。兄の後方からきゅうりの細巻きが一口大にカットされたものがやって来た様を見やり、光秀が声をかけた。弟のねだるような声に促され、光臣が目の前に差し掛かった皿を一枚取ると、光鴇の前に置いてやる。
「ありがと!」
「鴇くん、お醤油つけて食べる?わさびは全品抜かれてるみたいだけど」
「おしょうゆ、つける」
「ちょっと待ってね」
テーブルの端へと備え付けられているサイドテーブルの上には、小皿や醤油、甘ダレ、がり、粉末状の茶や湯呑茶碗、お手拭き用のおしぼりなどが置かれている。