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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



「そっか、お手々綺麗に出来て偉いね」
「ふふん!」

ちゃんと用を足せたか案じていたが、どうやら問題なかったらしい。仄かに石鹸の香りがする小さな両手をぱっと広げて得意げな様子で母へ見せると、凪が幼子の頭を褒めるように撫でる。胸を張って嬉しそうにしてみせた光鴇へ笑いかけた後、凪が光秀を振り仰いで問いかけた。

「それにしても、よく絡まれてるのが私だって分かりましたね?」
「子らを連れて戻る途中、お前の居た場所に先程の童達が群がっていたのが見えた」
「母上が不用意にその場を動く筈がないと思い、父上が助けに向かわれたのです」
「とき、あにうえといっしょにははうえ、たすけた!」

現代に不慣れな三人を残して凪が動く筈がないと踏んだ光秀が、逸早くその場を動いて男達から彼女を救出しに足を向けたという訳だ。自信満々に胸を張る幼子が主張しているのは、まるで図ったようなタイミングで光秀と大学生達の前に割り入った事を指しているのだろう。視線だけで凪が問うように光臣を見ると、彼は父によく似た金色の涼やかな眸を笑ませる。

「ああして不逞の輩達の前に割り入ったのは、実は父上のご指示です」
「えっ!?光秀さんの……?」

光臣の返答に驚き、凪が目を丸くして男を見上げた。微かに口元へ笑みを浮かべた光秀は、両手それぞれで息子達の頭をぽん、と一度触れた後、静かに手を下ろす。

「これだけ人目の多い場所で童(わっぱ)達から詰(なじ)られれば、大抵は分が悪いと身を引くだろう」
「父上が灸を据えても尚、相手が向かって来るようであれば、不用意な諍いを長引かせない為にも俺達がわざと割り入るように、と言われていたのです」
「せっかく家族で過ごせるひとときに、余計な水は差されたくないと思ってな」
「そうだったんですね……」

現に大学生達は二人の子供達に責め立てられた事で周囲からの反感や嫌疑を買い、罰の悪そうな様子ですごすごと立ち去って行った。光秀の目論見が見事成功したという訳である。

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