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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



隣では幼子が明らかにむっと眉根を寄せた状態で腰に両手をあて、ふんぞり返りながら文句を言っていた。子供達相手に詰られている様を目にすると、周囲の野次馬の目が一気に変わり始める。具体的には罪なき親子にやたらと悪絡みするチンピラの図の完成だ。さすがに分が悪いと感じたらしく、大学生達が罰が悪そうに周囲を見回した。旗色が完全に宜しくない事は明白であり、仲間の一人がおもむろに促す。

「お、おい……もう行こうぜ……」
「そうだな…行くぞ」
「あー……くそ、うぜえ…っ」

苛立たしげな雰囲気を醸し出しながらも大学生達がすごすごと立ち去って行くと、周囲はひと悶着が終わった事を見てから再び何事もなかったように歩き出した。凪もそっと片手を胸にあてがいながら、安堵の息を漏らす。振り返った光秀と、母の元へ近付いて来た子供達がそれぞれ凪を心配そうに見た。

「母上、ご無事でしたか?お一人にしてしまって申し訳ありません…」
「いたいいたい、ない?」
「うん、ありがとう二人共。別にこれといって酷い事はされてないから平気。光秀さんも助けてくれてありがとうございました」
「夫が妻子(つまこ)を守るのは当然の事だ。お前が無事ならそれでいい」

子供達を安堵させるよう笑みを浮かべて凪が視線をそれぞれへ合わせる。絡まれたとはいえ、乱世に比べれば現代での諍いなど一部の例外を除き余程ましというものである。これといった怪我もなく、自身が無事である事を子供達へと伝えた後、改めて光秀へ向き直った。彼女が礼を伝えると、穏やかな調子で男が応える。伸ばされた片手が凪の頬を自然な所作でひと撫でし、妻を優しく労った。

あわや乱闘騒ぎか、と身構えていた観光客や通行人達が立ち去った往来は、元の賑やかな観光地独特の華やぎを取り戻す。凪の手にある荷物をさり気ない所作で引き受けた光秀へ再度礼を紡ぐと、彼女が首を傾げた。

「鴇くん、光秀さんの言う事ちゃんと聞いて出来たかな?」
「うん、ときできた!おててもあわあわであらった!」

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