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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



言葉にしたと同時、握り込んでいた状態の掌へぐっと力を込める。およそ五キロ近いマスケット銃を日夜扱い、時には振り回している武将の握力だ。たかだか平和な現代でジムに通っている程度の若者を一捻りする事など造作もない。ぎり、と骨が軋むような痛みを覚えた男が、苦悶の声すら出せずに脂汗を滲ませた。突如大人しくなった仲間内を怪訝に思い、他の大学生達が不安げに顔を見合わせる。

「これ以上観衆の前で恥を晒したくなければ、早々に手を引け」
「く、くそ……!」
「悪態をつく前に、今後は喧嘩を売るべき相手をよく見定める事だな、童(わっぱ)」

男にしか聞こえぬ秘めやかな声で告げ、光秀が掴んでいた左拳を解放した。詰めていた息を吐き出し、片手で拳を庇うようにした男がたたらを踏んで数歩後退すると、忌々しそうに光秀を睨みつける。完全に自尊心を損なわれた事への苛立ちに顔を赤く染めると、怒りのまま再び光秀に食い下がろうとした。けれども、今度はその男の前に小さな二人の影が滑り込んで来る。

(臣くん、鴇くん……!?)

光秀の前に躍り出た二人の息子達の姿を目にして、凪が驚きに息を呑んだ。思わず二人を引き戻そうと足を踏み出しかけるも、光秀が僅かに彼女の方へ振り返り、視線を交わして来る。その眼差しはまるで問題ないとでも言いたげであり、そもそも光秀本人が子供達を危険に晒す筈がないと思い直した彼女は、応えるように小さく頷いた。

一方、父と母を守るように立ち塞がった兄弟は、明らかに怒ったような表情を浮かべて大学生達を睨む。光秀と凪、それぞれに酷く似通った顔立ちをしている事から、二人の子供なのだと察した男達が、夫持ちな上に子持ちかよと内心歯噛みする中、光臣が何処となく冷めた眼差しで相手を睨んだ。

「もう勝負はついているでしょう。これ以上無闇に騒ぎを起こすなど大人気ないですよ」
「ときのははうえとちちうえ、いじめちゃめっ!」

少年の風貌ながら父である光秀と瓜二つ故に、涼やかな眼差しを送るといっそうその端正な面持ちが際立つ。

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