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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



「ねえ、お姉さん聞いてる?」
「えっ!?私……!?」

そこそこ上背のある男がにこやかに笑いかけてくれば、凪がぎょっとした様子で目を丸くした。よもや夫のいる身、且つ二人も子を産んだ自身がナンパなどされる筈がない、と完全に高を括っていただけに驚きもひとしおといったところであろう。黒々した大きな猫目を瞠った彼女へ男達が明るい調子で笑い声を上げると、実に馴れ馴れしい雰囲気で更に話しかけて来た。

「そうだよ、さっきからお姉さんって声かけてたじゃん?」
「着物似合うねー。こんなに気合い入れて可愛い格好して来たのに、ドタキャンするとか彼氏マジでないわ」
「違いますけど、ドタキャンとかされてないし、そもそも……─────」

待ち合わせじゃなくて、息子二人をトイレに連れて行ってくれてるだけなんですけど。そう言い切る前に畳み掛けるよう、東京から京都へ旅行にでも来たらしい陽気な男達が言い募る。

「だってさっきその辺見回して溜息ついてたじゃん。アレ、絶対ドタ食らったやつだって」
「こっちの子?もしそうだったら友達何人か呼んで、一緒に飲もうよ」
「俺は別にお姉さん一人でも可愛いからいいけどね」

好き勝手に言葉を並べる男達を前に、凪が思わず半眼になった。果たして自分を何歳に見ているのかは分からないが、雅な京都の町並みに似合わないたいそう風紀を損なう男達である。凪の表情が苛立たしげな色を帯びている事に気付いていないのか、男同士で騒ぎ始めた様を前にして溜息を漏らした。

(確かにきょろきょろして溜息ついてたけど、それ全然違う意味だから!光秀さん達にここで待ってるって言った手前、下手に動いたら心配かけちゃうだろうし、取り敢えず適当にあしらってればその内何処か行くよね)

「待ち合わせじゃなくて合流待ちです。その内連れが戻って来ると思うので、どうぞお構いなく」
「じゃあ合流する友達も一緒に遊ぼうよ。俺ら今日明日は京都居るからさ。今晩はゆっくり遊べるんだよね」
「だから、他を当たってって……─────」
「だってお姉さんの事気に入っちゃったし。ねえ、遊ぼうよ」

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