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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



五百年前では到底考え難い事が普通に行われている事実に、光臣が感心した様子で呟きを零す。衣食住、あらゆる文化が年月と共に進化していく様は中々に興味深くもあり、感慨深くもある。そんな感想を零し合っていると、不意にそれまでご機嫌な様子であった光鴇が繋いだ父の手をくいっと軽く引っ張り、眉尻を下げた。

「ちちうえ、ときかわや、いきたい」

幼子の訴えに凪が周囲を見回し、ちょうど視界に映り込んだ手洗いを見つけて声をかける。観光地という事もあり、ある一定の間隔で手洗いが設けられている点は救いであった。

「あ、お手洗いね。えっと…あ、ちょうどあそこに公衆トイレ……じゃなくて厠あるよ」
「なら、俺が連れて行こう」
「光秀さん、いいんですか…?」
「構わない」

数度現代へ訪れた事のある光秀は、こちらの世の手洗いの使い方も普通に知っている。むしろそれ以外にもシャワーなど、生活に必要な最低限の知識は得ている為、その辺りは心配ない。光鴇を連れて行ってくれると言う光秀へ凪が首を傾げていると、光臣もついでとばかりに口を開いた。

「……あ、なら俺も一緒に行きます。確かこちらの世は男女で厠が分かれているのでしたね」
「じゃあ光秀さん、すみませんが二人をお願い出来ますか?荷物は私が持ってるので。ここで待ってますね」
「済まないな」
「ははうえ、ときのきつねさん、もっててくれる?」
「うん、一緒に入れておくね」

光秀が持っていた紙袋を受け取れば、光鴇も手にしていた黒狐の飴細工を渡して来る。他の三つと同じく袋の中に収めたのを見やり、三人は身を翻して公衆トイレの方へと向かって行った。

(女性用より男性用の方が空いてる事が多いけど、結構沢山人居るからなあ。ちょっと混んでるかも)

初秋とはいえ、京都は京都だ。往来を行き交う人の多さを見ればそういった場が混み合うのも必然だろう。和風の外観をした公衆トイレはそこそこ大きな造りのようだが、人の出入りも中々に激しい。

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