❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
飴細工という事を忘れ、ずっと飾って置きたい程だ。食べる前に子供達に写真を撮らせてもらおうと硬く誓っていると、傍らで光秀が心付けを加えた金額を支払っていた。
「こ、こんなに頂けませんよ…!」
「なに、妻や子らを楽しませてくれた礼だ。取っておくといい」
果たして幾ら光秀が支払ったのかは定かではないが、ぎょっとして目を丸くした職人が慌てて首を振っているのを前に、光秀が穏やかな声色で告げる。そうして早々に突き返される前にと凪や光臣を促した。
「凪、臣、行くぞ」
「はい!ありがとうございました!」
「素晴らしい手腕、感服の至りです。ではこれで」
「あめ、ありがと!」
光秀の声がけに頷いて凪と光臣がそれぞれ職人へ声をかける。最後に父へ抱きかかえられていた幼子が手を振ると、オーダーメイドとはいえ飴四つ分の金額を遥かに越えた心付けをもらった職人は、呆然としたまま人混みへ紛れて行く親子を見送ったのだった。
「こんこん、ときのきつねさん」
飴細工屋を立ち去った後、親子は再び京都の町中散策へと戻った。光秀の腕から下りた光鴇は、片手を父と繋いだ状態で、空いた反対の手にはラッピングされた黒い小さな狐の飴を持っている。にこにことご機嫌な様子を見るに、相当お気に召したのだろう。凪と光秀、光臣の飴は崩れないよう硝子細工品を入れた紙袋の中へ一緒に収めていた。
「仔栗鼠がご機嫌なようで何よりだ」
「飴細工、相当気に入ったみたいですね。乱世でもお祭りとかにああいう屋台があったら、凄く賑わいそうです」
「こちらの世とまではいかないも、それなりに色付けが叶えば、一躍有名な大店(おおだな)になるだろうな」
「食べ物に色をつけるという発想はありませんでした。こちらの世の者達は面白い事を考えるのですね」
光鴇の様子をちらりと視界に入れ、光秀が笑った。乱世の飴細工も職人技が光る見事なものがたくさんあるが、そのほとんどがやや琥珀味を帯びた鼈甲(べっこう)色だ。透明な飴細工も神秘的で美しいが、色を乗せる事で更に人の目を惹きつける事だろう。