❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
一切動じず言い切った光秀の態度には妙な説得力があり、職人もそれ以上余計な事は追及せず、特別に家族四人分の飴を作ってくれると言って早速作業に取り掛かる。
「良かったね、鴇くん。狐さん作ってくれるって」
「うん、きつねさん、たのしみ!」
「白の狐はともかく、黒の狐はどのように作るのでしょう……?」
凪が光鴇へ声をかけると幼子が嬉しそうに笑顔を浮かべて見せる。黒い飴など当然乱世では見た事がない為、まるで想像がつかないとばかりに光臣が興味を示して視線を向けた。
「どうやらあの飴の塊に墨のようなものを加えるらしいな」
「本当だ……透明な飴がどんどん黒くなってく……」
取り出した飴の塊に黒い食用色素を加えて全体的に練り込んでいけば、見る見る内に透明なそれが黒色へと変化していった。適度な大きさにそれを千切って竹串の先端に膨らみをもたせつつ細長の形にくっつけ、見事な手捌きで生き物の形を作って行く。握り鋏で素早く精巧に模様や形を付けて行くと、やがて頭の部分と思わしき箇所にぴんと立った狐の耳が完成した。次いでふんわりと毛を蓄えた尻尾、前肢や後肢など、次々に狐と分かるような形を作って行く。
「すごいすごい!くろいきつねさん…!」
「少々小さめなところを見ると、あれはさしずめお前といったところか、鴇」
「ときもくろいきつねさん、こんこん」
(癒やし……)
光秀の言う通り、竹串の先端で元気に跳ねているような姿をしている黒い狐はやや小さめな印象だ。形作った後、筆を手にして白い色素で口や耳の皺、尻尾の毛先を描いて行く。仔狐の眸は金色に見立てた黄色であり、着色を次々にこなしていくと、やがて元気な黒い仔狐が完成した。
「はい、まずは小さい黒狐です」
「ありがと!かわいい!」
ラッピングを施した飴を差し出され、それを受け取った光鴇が笑顔で礼を述べる。如何にもやんちゃそうな仔狐が生き生きと竹串の先端で表現されている様は、光鴇の姿を彷彿とさせて実に愛らしい出来栄えだ。