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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



「さあ次のお題は何をご希望ですか?何でも即興でお作り致しますよ」

どうやら順番で並んでいるのではなく、見物人の中からリクエストの声を募っているらしい。実際に作って欲しいというより、その作る工程を物珍しさから眺めていたらしい客達が周囲を見回す中、光秀の腕に抱き上げられていた光鴇が眸をきらきらと輝かせて片手を上げた。

「とき、こんこんきつねさんがいい!」

高らかに告げたそれに、周囲の視線が一気に明智家親子へ集まる。和服を着た男前な父に抱っこされた状態の幼子が、期待を込めた眸で職人を見つめていた。周囲に居る女性達が色めき立ち、あるいは微笑ましそうに面持ちを綻ばせる中、職人が了承を得るよう光秀を見る。

「お代を頂く事になりますが、宜しいですか?お父さん」
「ああ、構わない。済まないが頼めるか」
「畏まりました。では次は狐を作らせてもらいます。狐の色は何色がいいかな?」

(お父さん……乱世では滅多にそうやって呼ばれる事無いもんね。可愛い…)

現代では割と一般的だが、乱世では当然父、母といった表現の方が多い。お父さんと呼称された光秀にきゅん、と胸の奥を凪が高鳴らせている内にも、幼子の求めに応じるよう男が鷹揚に頷いた。注文を承ったと言わんばかりに頷いた職人が、光鴇へ視線を向けて問いかけて来る。狐の色と言えば普通は黄色か白などだろうが、子供の感性に委ねてくれるらしい。色を問われて首を軽く捻った光鴇が、ぱっと嬉しそうな面持ちで告げた。

「くろとしろ、くろがときとははうえで、しろがちちうえとあにうえ」
「なるほどなるほど、随分と古風で奥ゆかしい躾をなさっているんですねえ」
「なにぶん、由緒ある家柄なものでな」
「それはそれは。ではせっかくなので狐の親子を作らせていただきます」

今どき父上、母上などと呼ぶ家庭は逆に珍しい。光鴇の発言に目を丸くした職人が、父である光秀を見てにこやかな笑顔を向けると、彼はいつもの調子で長い睫毛を伏せ、まるで気にした様子もなくさらりと嘘を述べた。

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