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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



実はこの店はホテルで眺めていたパンフレットにも載っていた場所であり、観光名所のひとつとして紹介されていた老舗の飴細工屋であった。日によって実演は行っていないようだが、今日はたまたま運が良かったらしい。

「ほう……?見事なものだな。飴にああも色がつくとは」
「あめなの?たべれるやつ?」
「どうやらそうらしい。言われなければ飴と気付かない程の出来栄えだ」
「すごい!おいしそう!」
「食い物と分かると素直だな、お前は」
「とき、あめ、あまいからすき」

乱世にも確かに飴細工は存在するが、店頭に飾られているような彩り豊かなものは当然ながら見た事がない。職人の繊細な技術により、あっという間に細やかな蝶の飴細工が目の前で完成した様を見て、周囲から拍手が巻き起こった。形が出来上がった後は彩色工程に入り、細い小筆で様々な色合いの食用色素を使って色付けしていくと、透明な翅(はね)に様々な美しい色彩を持つ蝶が仕上がった。

「綺麗……」
「美しいですね。まるで先刻見たびーどろのようです」

今にも飛び立ちそうな蝶を前にして、凪が感嘆の声を漏らす。透き通る飴細工に色が乗る事で、まるでステンドグラスのような輝きを帯びる様は菓子の領域を遥かに飛び越え、芸術と呼んで差し支えない程であった。竹串の先端に作られた蝶の飴細工へ透明な袋を被せてラッピングし、店先に恋人と共に居た若い女性へ職人が手渡す。嬉しそうに面持ちを綻ばせた女性がそれを受け取り、男性の方が金額を支払って立ち去って行った。

(もしかしてオーダーメイドってやつなのかな。子供達が喜びそうだけど、順番待ちとかだよね、きっと……)

乱世では絶対に見られない色彩豊かな飴細工をオーダーメイド出来たなら、旅行の良い思い出になるかもしれないと考えた凪だが、さすがにこの人だかりだ。他にも待っている人が居るかもしれない。せめて店頭に飾られている飴の中から、子供達が気に入ったものを買って帰ろうと考えた彼女が声をかけようとしたと同時、手を水で清めた職人が周囲の見物人達に向かって声をかける。

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