❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
父が何かと秘密を作るのは今に始まった事ではないが、こちらにも秘密がある分、今はある意味で対等だ。むしろ正直に明かしてくれなくて良かったとさえ考えている光臣の言い分へ、可笑しそうに相槌を打った光秀が不意に金色の眸をちらりと横へ流す。何処となく嫌な予感がした凪が目を瞬かせている中、その隣できょとんとしている光鴇と父の視線がぶつかり合った。
「鴇、母と兄の二人で何をしていた?」
「!!?」
まさか自分に振られると思ってはおらず、幼子が大きな猫目を更に大きくして丸くする。凪と光臣が、はっとした様子で光鴇の方へ意識を向けた。三人から色々と種類の異なる眼差しを受け、あからさまにぎくりとしたような表情を浮かべた光鴇が、唇をきゅっと引き結ぶ。
(ちちうえにきかれても、しゃべっちゃめってあにうえ、いってた)
小さな頭で必死に思考を巡らせた後、ほとんど衝動的に幼子が紅葉の両手で口を塞ぎ、父の眼差しから逃れるように明後日の方向を向いた。
「ときも、ひみつ!」
ふいっと顔を逸らしながら言い切られた短いそれに、光秀がくつくつと喉奥を微かに鳴らして笑う。元々最初から完全に暴くつもりなどなかった光秀が、それ以上の追及を止めて頬杖をついた。
「やれやれ、仔栗鼠にまで隠し事をされるとはな」
「光秀さんも秘密なんだから、鴇くんだって秘密です。明日を楽しみにしていてくださいね」
凪や光臣とて、光秀が何故最初の段階で席を外したのか、その理由をよく分かっている。こうしてわざと問いかけて来たのが、本気で問い詰めるつもりではない、単なる意地悪だという事も気付いていた。凪が三人で作った光秀に贈る為のプレゼントへちらりと視線を流し、笑顔で告げる。
「ああ、そうするとしよう」
男が口元へ綺麗な弧を描き、金色の双眸を柔らかく眇める。袂へ忍ばせた小箱三つ、それを隠しつつ自然な所作で袖を優しく払った光秀の【秘密】に気付く事が出来たのは、生憎と誰も居なかったのだった。