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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



桜や梅、牡丹に彼岸花、四季折々の花々が並ぶその中に、一際目を惹く花が映り込んだ。

(鴇の言う通り黒い狐や猫も悪くはないが、やはり凪にはこの花がよく似合う)

手にしたのは桔梗の花に象られた硝子細工であった。光秀の親指程の大きさであるそれをそっと壊れ物を扱う繊細な手付きで触れ、身を翻す。途中、動物が並んでいる棚の前で立ち止まった男が、くすりと微かに笑みを零して幾つかの小物を手にするとレジへと向かう。その悠然とした長身の後ろ姿を眺めていた女性客達は、見た目や雰囲気の割に随分と可愛らしいものを購入した和服美男の姿を恍惚とした様で見送った。

工房へ戻った光秀は、空いている別のテーブルへと腰を下ろした。様々なパーツとやらの中の部品を手にした光秀が、暫し何事かを思案した後でおもむろに手を動かし始める。少し離れたところでは凪達が身を寄せ合いながら真剣に何かを作っているらしく、暫くはこのままわざと離れていた方が良さそうだと考え、すぐには彼女達の元へ戻らずに男は暫しそこで留まったのだった。

(そろそろ半刻以上経つが、どうやら完成したらしいな)

顔を上げた先では、妻や息子達が満足げな様で完成品を店のスタッフに箱へ詰めてもらっていた。硝子細工は繊細な品である為、梱包材へ丁寧に包んだ後で厚めの紙箱へ入れてもらう事が出来る。小さな箱とやや中位の箱の二つを店名、浪漫譚のロゴが印字されたクラフトバッグに入れた様を確認し、おもむろに光秀が立ち上がった。

「明日、これを渡すまでは絶対に内緒だ。いいな、鴇」
「わかった!とき、ひみつ、まもる」
「光秀さん、喜んでくれるといいね」
「きっと大丈夫ですよ。ところで、父上は一体どちらに……」

こそりこそりと声量を控えながらやり取りしている三人の元へ背後から足音も無く近付いた男が、わざと最後の一歩だけ足音を立てる。たん、と鈍い音が背後から鳴った事で、三人の肩が面白いくらい一斉に跳ねた。

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