❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
閉ざしたパンフレットを光臣から受け取った凪が、表紙を開いてすぐに載っている目次のページへ何気なしに視線を落とした。
(私の行きたいところかあ……光秀さんや子供達と一緒に過ごせるだけで十分だし、これといって特別行きたいところはないような気もするんだけど……)
家族で共に過ごせるだけで十分贅沢というものだ。昨年の光秀の誕生日は戦と被った関係で、当日に祝う事が出来なかった。一昨年は光鴇が流行り風邪にかかってしまった関係で祝いどころではなかったなど、色々な出来事が重なった為、家族全員が健康で揃っている誕生日は久々なのである。この上、現代へ旅行まで出来たのだから、それ以上望むなど贅沢とすら思えてしまうのだが。
(でも、せっかく皆が訊いてくれてるし、無いって言うのも悪いよね。うーん……光秀さんや子供達が喜んでくれそうな事……)
目次に記載されている幾つかの特集見出しを視線でなぞっていると、とある一文が目に留まった。はっとした様子で微かに目を瞠る。
(これだ……!!)
ぱっと表情が輝いた彼女の様子を見やり、光秀が口元をそっと綻ばせた。何やら妙案を思いついたらしいと読み取り、凪の視線の先を辿る……が、生憎とこちらの時代のかっちりとした文字は容易に解読出来ず、彼女が果たして何を見て嬉しそうな様を見せているのか、それを探る事は叶わなかった。
(やれやれ…字が読めないというのも、中々難儀だな)
そんな事を光秀が内心考えているなど露程も知らず、凪がパンフレットを閉じる。そうして子供達の顔を見回した後、最後に光秀を見上げた。
「私はその、デパートとかで明日着て行く皆の服が見たいです。さすがに動物園で着流しや小袖だとちょっと浮いちゃうので」
「服と言うと、町人達が身に付けているようなものですか……?」
「うん、郷に入っては郷に従えってやつだね」
「なるほど、一理あります」
凪が告げたのは、明日出掛ける為に着る衣服の買い物だった。