❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
小動物の如く純真無垢な眼差しを注がれてしまえば、光秀がそれを無碍に出来る筈もない。否、そもそもする気すらない訳だが、いずれにせよ一体誰に似たのか、無意識にあざとい事をしてのける我が子のおねだりに対し、光秀が笑みを零した。
「ああ、お前達が望むのならそれで構わない」
「わーい!」
「良かったな、鴇」
「うん、とき、このしょーげつのせなか、のるね!」
「多分さすがにちょっとそれは無理かなあ……」
「ん?」
父からの許可を無事もらい、光鴇が嬉しそうに声を上げた。ご機嫌になった弟の頭を兄が撫でると、パンフレットに載っている虎の写真を指差して意気揚々と宣言する。乱世育ち故なのか、些か果敢過ぎる我が子へ眉尻を下げた凪が零すと、きょとんとした光鴇が首を傾げた。
「この記事によると園内かなり広いみたいだから、行くなら明日早くに出発して向かった方が良さそうかな……光秀さん、その、大丈夫ですか?」
「忙しなく回るより、じっくりと見て回った方が有意義だろう。子らもその方が喜ぶ」
「ありがとうございます。じゃあ鴇くん希望の動物園は明日にしようね」
「たのしみ!とき、しょーげつにごはん、あげる」
「ほう?お前が餌にならないよう気を付けなければな」
「ん?」
既にパンフレットを見ているだけで興奮している様子である光鴇や、見た事のない動物の写真をじっと興味深そうに眺めている光臣を視界に映し、凪が微笑ましそうに面持ちを綻ばせた。光秀の同意ももらった事で、動物園は明日の早朝から出発する事とし、今日明日の大まかな予定が決まる。そんな中、光秀がふと隣に居る凪へ顔を向けて問いかけて来た。
「子らの希望は訊いたが、お前はどうしたい」
「私ですか……?」
「そうです。俺達だけの希望では悪いですから、母上もどうぞ」
「ははうえ、どこいきたい?」
子供達だけでなく、凪の希望までしっかり耳を傾けてくれる光秀へ胸の奥がきゅんと高鳴った。光臣や光鴇も彼女へ向き直って伺いを立ててくれる。