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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



彼女は気付いているか分からないが、こうして妻と、そして子供達を目一杯甘やかす事が光秀にとっての幸せであり、特権だと自負している。甘味を頬張って嬉しそうに綻ぶ様を見るだけで、得難い幸福感が胸の奥を満たした。

(ここならば、誰にも邪魔される事なく可愛いお前や子らを甘やかす事が出来る)

容易に命が脅かされない、乱世から見ればずっと平和な世。己の目指す先の世でこうして家族と共に過ごせるとは、何と贅沢な事なのか。

「よし、今日と明日の宿、それぞれ決まりました!早めのチェックインが出来る場所なので、食べ終わったら荷物とか一度置きに行きましょう」
「おとまり、たのしみ!」
「ここまで乱世と違うとなれば、宿も楽しみですね…!」
「はしゃぐのは構わないが、まず仔栗鼠は口の周りを拭いてからだ」
「ん?」

偶然がもたらした今日という日を、目一杯家族を甘やかすという意味で堪能する為、光秀がまずは濡れたおしぼりを手にして光鴇の口の周りを綺麗に拭ってやる。最後はもうひと口分、愛しい妻へ甘味を食べさせた後、明智家は今宵の宿へ移動するべく、喫茶店を後にしたのだった。


──────────────⋯


今宵泊まる高級有名ホテルは立ち寄った喫茶店から少々歩いた先、本能寺跡石碑から見て程近い場所に建っている。豪勢な外観は京都の景観に合わせているのか和風の色が強めであり、敷地へ足を踏み入れると見事に整えられた庭が目を楽しませた。観光バスなども入って来る関係で広めに取られた道路の脇、歩道を進んで入り口へ足を踏み入れると和洋折衷なロビーが広がっている。

高い天井には木組みの飾りが施され、そこに丸みを帯びた小さな照明が辺りを優しく照らしている。淡いオレンジ色の光によって暖かみを演出したロビー内には思い思いに寛ぐ客達の姿があった。磨き上げられた床は黒の大理石であり、天井の照明を受けて目映く輝く様に息子二人が関心を向けた様子で、揃って下を眺めていたのは中々に微笑ましい光景である。チェックインを済ませ、支払いを先に済ませた四人がホテルの従業員に案内されたのは、最上階のロイヤルスイートと呼ばれる一室であった。

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