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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



思いがけない不意打ちを食らったような心地になり、凪が火照った頬を冷ますように少し氷が解けたお冷を一口飲む。喉元をすっと冷たい水が通って行く感覚に吐息を零して気持ちを整え、改めてスマホへと向き直った。

(うーんと、じゃあ光秀さんに甘えて今日はここに泊まろうかな。子供達もベッド初めてだし、きっと喜んでくれるよね。明日は逆に光秀さんの誕生日当日だから、ちょっと落ち着けるようなところがいいかなあ)

凪が早速候補に入れていたホテルへ予約を入れる為、スマホを操作していると、光秀が食べかけである彼女の甘味を視界に入れた。隣では相変わらず子供達はそれぞれの甘味に夢中であり、時折窓の外を見ては初めて目にする不可思議なものに関心を寄せている。

皿を静かに引き寄せ、ナイフとフォークを手に取った。先刻彼女が扱っていたのを見様見真似……とは思えぬ実に器用な手付きで使いこなし、ワッフルと間に挟まった甘味を一口大に切る。傍に添えられた黒蜜がけ抹茶クリームをつけてやり、手元へ集中する彼女の名を呼んだ。

「凪」
「はい……?」

顔を上げた凪の目の前に、甘い香りの漂う甘味がフォークに刺さった状態で差し出される。そっと視線を正面に向けると、頬杖をついたままフォークで甘味を食べさせようとしている男の姿が映り込み、凪が目を瞬かせた。

「光秀さん、ナイフ使えたんですか……?」
「やり方を見ていればどうとでもなる」
「さすが器用ですね……じゃなくて、私自分で食べられますよ」
「宿を手配するので手一杯のようだったからな。俺が食べさせてやろうと思っただけだ。ほら、口を開けろ」
「う……何から何までありがとうございます」
「妻を甘やかすのは、夫だけの特権だろう?」

スマホにかかりきりな凪を気遣って、というのはほんの建前だ。気遣う気持ちがない訳ではないが、本当の理由は他にある。ちらりと周囲の様子を窺い、相変わらず客数が落ち着いている店内を見回してから、凪が気恥ずかしそうにしつつも光秀が持つフォークから甘味を食べた。

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