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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



今度は兄弟で再び食べさせ合っているのを傍目に、光秀が意識を正面に居る凪へ戻す。何やら考え込んでいるらしい彼女へ頬杖をつきながら片手を伸ばし、親指を眉間へ触れさせた。

「!」
「宿は見つかりそうか」
「うーん、幾つか候補は見つかったんですけど……」
「何か問題があるなら、一人で悩まず言ってみるといい」

ひんやりとした指先が肌へ触れた事に目を瞠り、凪がおもむろに顔を上げる。触れさせた指をそのまま輪郭へ添わせた男が促すように問いかけた。そうすれば彼女が若干言い難そうに眉尻を下げつつ、遠慮がちに告げる。

「四人で泊まれるところ、あるにはあるんですけど結構いいホテル…じゃなくて宿なんです。場所も本能寺跡石碑からそこまで離れてないですし、立地的にはちょうどいいんですけどね」
「ほう……?」

凪が最も気にかけていたのは今回の旅行資金についてであった。実は安土を出立する前日、光秀から此度の旅行についてはすべて自分が払うと言われていたのだ。元々凪に勘定を滅多な事ではさせない男だが、乱世の貨幣と現代のそれは当然ながら種類が異なる。不安な様を見せた彼女へいつも通り安心させるよう告げた男へ、さすがに資金源をしつこく問うのも無粋だと思い、結局有耶無耶になってしまったのだが、検索で当日空き部屋があるホテルは京都内でも有数の高級ホテルである。四人で悠々過ごせる代わりに、中々の価格帯だ。

「……あ、でもここ今日一泊分しか空いてない。うーん、他の宿にしようかなあ」
「ならば一泊ずつ別の宿に泊まればいいだろう」
「えっ!?」

金銭面を案じているという凪に対し、さらりと光秀が事も無げに言ってのけた。さすがに無一文で来るのは如何なものかと、凪もある程度の金額を持って来てはいるが、二日間どのように過ごすか分からない以上、宿は抑えた方がいいのでは、と思っていたのである。素で驚いたらしい彼女の頬を軽く撫でた後、そっと手を引いた光秀が告げた。

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