❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
はにかみながら告げる彼女へ微かに目を瞠った男が、やがて柔らかく笑みを乗せる。
「そうか」
「確かにこの見世の茶も美味しいですが、やはり父上が点ててくれた茶が一番です」
「うん、お店の人に悪いから大きな声では言えないけど、ね?」
「まったく、仕方のない妻と子だ」
相槌を打った光秀に対し、同じく茶碗を傾けていた光臣がそんな事を口にする。母子揃ってすっかり光秀が点てる茶の味に親しんでしまったらしい様子へ、男が肩を竦めてみせた。そんな中、クッキー片手に光鴇が話へ無理矢理加わるよう自己主張する。
「ときも!ときもまっちゃ、のみたい!」
「お前のお子様舌にはまだ少し早いな。兄と同じくらいの歳になったら点ててやるとしよう」
「むっ……」
甘味に用いられる抹茶味とは異なり、点てた茶は幼い光鴇には少々苦く感じるだろう。光秀が幼子へ視線を流しつつ伝えるも、光鴇が扱いの異なる事実に不服を訴える。クリームやら黒蜜やらを口の周りや頬につけた状態で光鴇が不満を露わにしていると、パフェグラスに刺さったままのスプーンを手に取り、光秀が抹茶味の一口大にカットされたシフォンケーキに抹茶ソフトクリームを添えてすくい、幼子の口元へ運んだ。
「今は代わりにこっちを食べるといい」
「とき、だまされない。あむっ」
「よしよし、単純で実に扱いやすいな」
「父上、それ褒めてますか?」
「無論だ」
(鴇くん、基本的に差し出されたものは何でも食べちゃうからなあ……いつもあんな感じで光秀さんに話逸らされてるんだよね…さすがだ)
むすっとしたまま、けれど目の前の甘味を拒絶する事もなく素直に食べた幼子の頭を父が片手で撫でる。あっさりと父によって陥落した弟を見やり、光臣が白玉団子を頬張りながら苦笑した。さらりと肯定する男が長い睫毛を伏せて笑む姿や、何だかんだと既にパフェへ夢中な幼子を見て凪がいっそ感心を寄せる。
(っと、いけない……二人が食べてる間に今日明日泊まる場所探さないと…!当日宿泊って難しそうだけど、大丈夫かな……)