❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
「ああ、そうするとしよう」
「おみせ?きなこもち、ある?」
「きなこ餅もいいけど、他にももっと珍しいものが沢山あると思うよ」
「…!たのしみだね、あにうえ!」
「そうだな、はしゃぎ過ぎて転ばないよう気を付けるんだぞ」
店と耳にすれば茶屋くらいしか思いつかなかったらしい光鴇が、嬉しそうに眸を輝かせた。好物のきなこ餅もさる事ながら、現代には子供達が喜びそうな甘味が目白押しだ。微笑ましげな様で凪が告げると、期待に胸を膨らませた光鴇が兄を振り仰ぐ。未知の五百年後は期待と好奇心をくすぐるものがいっぱいで、心なしか普段よりも弾んだ声を上げた光臣や光鴇を見て、父母の二人は互いに顔を見合わせると笑い合ったのだった。
それから親子四人は、本能寺跡石碑から程近い場所にある喫茶店へと足を踏み入れた。平日の午前中という事で比較的店内の客数も落ち着いているとあり、着物姿の店員へお好きな席へどうぞと案内された四人は、奥まった硝子窓側に面するテーブル席へとついた。外観からして和モダンなそこは、古民家の内装を意識した店らしく、小袖や着流し姿の凪達であっても違和感無く立ち寄る事が出来たのだった。
オイルランプ風の形状をしたオレンジ色の間接照明が各テーブルの上に吊るされていて、じんわりと温かみのある優しい光が滲んでいる。黒壇色のテーブルは椅子と揃いであり、椅子には落ち着いた色合いのちりめん布が使われた柔らかな座布団が敷かれていた。ひと席ずつ適度な高さの衝立で仕切られており、席に着くと前後の席が見え難いような気遣いの窺える設計でもある。
奥には小上がりの座敷席もあったが、光鴇が硝子窓の向こうから見える道路に興味を示していたとあり、交通ルールにおいて注意喚起する目的も兼ねてテーブル席を選んだという訳だ。
「あにうえみて、あのはこみたいなの、おうまさんよりはやい!」
「通り過ぎる時、凄い音だったな。中に人が乗ってたみたいだが、一体どんな絡繰りで動いているんだ……?」