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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



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ふと意識を浮上させた凪は、広い胸にしっかりと抱き込まれているのを自覚して瞼をゆるゆると持ち上げた。傍には光臣の姿もあり、息子ごと守るように背へ男のしなやかな腕が回っている事に気付く。はっと自覚した瞬間、まるで音楽の再生ボタンを押したかの如く、周囲の音が鮮明に聞こえて来た。

「え、見てあの和服の人、背高くて格好良くない!?」
「でも子供居るし、奥さんっぽい人居るから既婚者でしょ。残念ー」

(現代に来て早々光秀さんモテてる!!?)

鼓膜を揺さぶった女性達の話し声に衝撃を受け、勢いよく顔を上げる。そうすれば目映い太陽の光が射し込む、懐かし過ぎる光景の中へ溶け込むようにして光秀の姿が映り込んだ。

「皆無事のようだな」
「は、はい……ありがとうございます」

一足先に意識を浮上させていたらしい光秀が、凪と光臣、そして光鴇の姿を目にして眸に安堵を滲ませる。親子でぴったり寄り添うようにくっついていた事を今更自覚し、凪が礼を言いながら身を離した。ぐるりと辺りを見回すと多少景観は変わってはいるが、傍に【本能寺跡】と書かれた石碑の存在を目にして、無事五百年後へやって来た事を確認する。

太陽の高さから察するに、まだ午前十時を過ぎるか過ぎないかといった頃だ。抜けるような青々しい空が一面に広がっている様は、先程本能寺で見た曇天とは比べ物にもならない程の見事な秋晴れである。仄かに鼻先を秋の香りが掠め、どうやらこちらも間違いなく秋だという事が伝わって来た。道行く人々はまだ初秋の装いであり、平日らしい今日はスーツ姿のサラリーマンやOL、あるいは学生達などが道を行き交っている。

「ひと、いっぱい……」
「京の都より沢山人が居ますね……」

初めて目にする五百年後の世を前に、子供達二人が半ば放心した様子で周囲を見回した。安土城下町や京の都なども大層栄えて人が多い印象だが、目の前に広がるそれは二人の想像を遥かに越えていた。

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