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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



さすがに安土から本能寺まで丸腰で向かう事は出来なかった為、刀や銃は持って来ていたが、現代には持ち込むと色々面倒になる関係で、途中まで同行してくれた九兵衛が持ち帰ってくれた。危険物の持ち込みもないこの装いならば、現代に飛んでも京都であればそこまで違和感はないだろう。

「それなら安心だ。さて、そろそろ時間だな」

佐助がふと辺りを見回し、人差し指で眼鏡のブリッジを押し上げる。つられるように面々が空へ意識を向ければ、先程まで爽やかな秋晴れだったにも関わらず、本能寺の周辺だけが分厚い鈍色の雲に覆われ始めていた。

「おそら、くらい」
「わーむほーるの予兆か」
「あ、小雨が降って来ました」

光鴇が不安げに呟くと光秀が小さな手を取って繋いでやる。数度この現象を目の当たりにしている為、光秀や凪、光臣は然程動揺していないが、幼子はそうもいかないのだろう。兄が曇天から降って来た細い雨を見て、双眸を瞬かせた。やがて生温い湿気を孕んだ風が辺りへ吹き付け、髪を揺らす。細やかな粒の雨が控えめながらも降って来たと共に、突如弾けるような雷鳴が轟いた。

「皆さん、出来るだけ離れないで一箇所に固まってください!」
「凪、臣、俺から離れるな」
「はい…!」

佐助が四人の傍に近付いて言うと同時、片手で光鴇の手を繋いでいた光秀が凪の腰を抱き寄せた。彼女は彼女で光臣と手をしっかりと繋ぎ、五人で身を寄せ合う。辺りが夜と錯覚する程の暗闇に包まれた瞬間、いっそう大きな音を立てて雷が弾けた。目映い閃光に貫かれ、地鳴りのようなそれが石畳すら揺らがすような感覚に陥ったと同時─────本能寺に居た五人の姿は跡形も無く消え去ったのだった。

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