❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
兄が父に褒められたのを間近で目にした弟が、はっとした様子で目を丸くした後、自己主張する。父母の傍までやって来た兄弟が膝をつき、盆を畳の上に置く様を見て光秀が可笑しそうに片眉を持ち上げた。
「ほう、そうか。お前はどんな手伝いをしたんだ、鴇」
「おもちゃ、きんちゃくにいれた!あとみっただにけんだま、あげた!」
「何故光忠へけん玉を渡したのかは不明だが、偉いな」
「ふふん!」
父に褒められた事へ満足気に光鴇が笑う。微笑ましい父子達のやり取りにほっこりした心地の凪であったが、今は状況が状況だけに落ち着かない。何せ未だ光秀の両腕は凪を背後からしっかりと抱きしめたままであった。
「……あの、光秀さん、そろそろ離してもらえると…」
「つれない事を言ってくれるな。父母の仲が睦まじい方が子らも喜ぶだろう?」
「そういう問題ですか……!?」
そろりと男へ窺いを立てると、光秀が事も無げに言ってのける。正論のような極論のような事を述べる父へ賛同するよう、幼子が声を上げた。
「とき、うれしい!あとときもぎゅってしてちゅってする!」
「まあ今更ですから。それに父上の仰る事も一理あります。不仲よりはずっといいですよ」
(そうだとしても子供の前は恥ずかしいよ……!!)
特に長男の、既に数え年十三歳で若干達観した感が、余計な羞恥を煽る。真っ赤に染まった凪の耳朶を見て光秀が満足げに口角を持ち上げた。男が先刻口付けし損ねた分の意地悪をひっそりしているとも知らず、彼女はそれから暫く、子供達の前でただひたすら羞恥に苛まれる事になったのだった。
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信長を含めた武将達へ見送られ、安土を早朝に出立したその翌日、一行はワームホールの出現場所である本能寺へと無事到着していた。久々に訪れる本能寺は相変わらずの佇まいであり、京の都も変わらぬ賑わいを見せている。乱世は旅行日和と呼ぶに相応しい秋晴れであるが、果たして五百年後の世はどうだろうか。そんな期待と不安を胸に、明智家は佐助と合流を果たした。