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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



「あまり煽ってくれるな。止まれなくなりそうだ」
「……それは駄目。その、臣くんが厨から戻って来るから…」
「口付けくらいならば許されるだろう?」

多忙を極めている間、凪達が寝静まってから帰宅して目覚める頃には出掛けているというのが何日も続いていたとあって、戯れのような触れ合いですら欲を灯させる。揶揄ではなく本心を零した光秀に、凪の目元が仄かに紅くなった。先程厨へ茶を煎れに行ってくれている光臣がもうじき戻って来る頃だ。さすがに恥ずかしいと暗に告げると、男が彼女の耳朶へ囁きかける。ぞく、と身体の芯が震えるような感覚に息を詰め、凪が小さく頷いた。そうして長い睫毛をふわりと閉じた瞬間、閉め切られた襖が勢い良くすぱん!と開かれる。

「あ!ちちうえとははうえ、ちゅーしてる!ずるい!ときもする!」
「父上、お戻りだったんですね。お帰りなさい」

(ぎゃああああ!!!)

いつもは足音で幼子が近付いて来ると気付くのだが、今回に限ってそれがなかった。光鴇が珍しく廊下を走って来なかったのは兄の手伝いで茶菓子を運んでいたかららしい。襖が開いた瞬間、凄まじい速度で光秀から顔を逸らした凪だが、時既に遅し。

しっかり口付け直前の現場を息子二人に目撃され、幼子が不満げに頬を膨らませた。口付けを愛情表現のひとつとして見ている光鴇は、自分も加わりたい!という主張で終わるものの、兄の光臣はもはや慣れているとばかりに完全スルーであった。羞恥に苛まれた凪が心の中で悲鳴を上げる中、口付け出来ずに些か不服そうな男が、すぐ様仄かに苦味混じりの笑みを零すと父親の顔になり、振り返る。

「ああ、ただいま。母の手伝いをしたそうだな。偉いぞ、臣」
「……!あ、ありがとうございます…」
「!?ときも!ときもははうえのおてつだい、した!」

凪から支度を手伝ってくれたという話を先刻聞いていたとあり、光秀が光臣を褒める。そうすれば室内へ足を踏み入れた少年が気恥ずかしそうに目元を薄っすらと染め、礼を述べた。

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