第2章 居場所=三ツ谷隆
それは突然の出来事
放課後 三ツ谷は部活へと行こうと廊下を歩いていた
その後ろ姿を嬉しそうに走って追いかけてくる女生徒がいた
「三ツ谷せんぱ〜い」
声の主は最近良く絡んでくる香織だった
「あぁ…確か篠崎…さんだっけ?」
「やだ、香織って呼んでくれてもいいんですよ」
このやたらグイグイと来る感じが苦手だった
「いや、さすがに女の子を呼び捨てには出来ないから…」
ははっ…と引きつった笑いをする三ツ谷に「三ツ谷先輩って真面目なんですね」と都合よく勘違いしてくれた
「あっ、それで今日は先輩に差し入れをと思って」
言いながら三ツ谷の眼前にズズイと差し出したのは可愛くラッピングされたカップケーキだった
「私の想い沢山込めました」
語尾にハートマークでも付きそうな勢いの言い方に三ツ谷は思わず受け取ってしまった
「あ…あぁ、ありが…」
カップケーキにしか視線を集中して見ていなかったからちゃんと視線を合わせてお礼を言うのは常識だと思って香織の顔を見ようと視線を向けたら三ツ谷はあるモノに目線がいき、目が丸くなってしまった
「あっ、もしかして三ツ谷先輩、コレが気になるんですか?」
三ツ谷の視線の先にあるモノに香織は手を触れながら嬉しそうな顔をした
「…それ、どこで」
「ふふっ、これ凄く可愛くないですか?お店で見て一目惚れしちゃって」
そう言う香織に三ツ谷は疑惑の目を向けた
それもそのはず、香織の髪に付いているのは以前、三ツ谷がの為だけに作った たった1つのヘアピンだったから
だから何故 香織がそれを付けて目の前に立っているのかが分からなかった
「それ、可愛いな 俺も妹達に買ってやりたいから店の場所教えてくれよ」
「えっ!?あ…あ〜これ一点物だったので探してもないかと」
若干目を泳がせてしどろもどろに答える香織に「そっか、それは残念」というとくるっと向きを変えて歩き出した
「あっ!せんぱ〜い!今度妹さん達に会わせてくださいね〜」
と後から慌てたように叫んでいる香織の言葉を聞いていないのか早足でその場を去った