第59章 棘
とうとう試合の前日になると、天気はさらに荒れ模様となった。
風はうなりをあげ、雨は窓ガラスを激しく叩き続けている。そのせいで学校中が暗くなり、廊下にはいつも以上に松明や蝋燭が灯されていた。
午前の授業を終えたミラたちは、大広間へ向かって歩いている途中のことだった。
「あーあ、腕がもう少し何とかなったらなあ!」
わざとらしいため息が聞こえた。振り向くまでもなく、その声の主は分かった。
向こうからスリザリン生の一団が歩いてくる。その先頭で、左腕を包帯で吊ったドラコが、嵐の窓を眺めながら大げさに肩を落としていた。
「本当に残念だ。こんな絶好の試合日和なのに」
と、言ったドラコの口元だけが楽しそうに笑っている。
「シーカーとしてチームを勝たせてやりたかったんだけどな」
クラッブとゴイルが、ドラコの後ろでニヤニヤと笑っている。
「悪天候なんて僕は気にしないんだけど」
ドラコはちらりとハリーへ視線を向けた。
「腕がこの有様じゃ仕方ない」
ハリーは顔色一つ変えず、その横を通り過ぎようとした。
ロンは小さく舌打ちする。
「黙ってられないのか、マルフォイのやつ」
「相手にしないで、ロン。無視よ」
ミラも黙って歩き続けた。
しかし――
「まあ、ポッターには運が良かったな」
ドラコがくすりと笑う。
「僕が出ていたら、明日の試合はもっと早く終わっていただろう」
ロンの拳がぎゅっと握られる。
「それに、あんな天気じゃ箒に乗るだけでも怖い奴がいるかもしれないし」
ドラコは意味ありげに肩をすくめた。
「なあ、ポッター?」
その一言で、ミラの足が止まった。
「ミラ?」
ハリーが振り返る。
しかしミラは返事をしなかった。くるりと向きを変えると、一直線にドラコの方へ歩き出す。
「お、おい……!」
ロンが慌てる。
「ミラ、無視して!」
ハーマイオニーも呼び止める。
「ミラ!」