第56章 ホグズミード村
「……どう思われてもいい。私は私だもの」
「強がりじゃないのか?」
「違う」
きっぱりと言い切る。その声に震えはなかった。
ドラコは一瞬、つまらなそうに口を歪めたが、すぐにいつものニヤリとした笑みに戻った。
「まあ、安心しろ。今のところはな」
「……何が?」
「この話は、僕の中で留めておいてやる」
まるで恩を着せるように言い放ち、ドラコは立ち上がった。ちょうどその時、ハニーデュークスの扉が開き、紙袋を両腕いっぱいに抱えたクラッブとゴイルが転がり出てくる。
「マルフォイ!見ろよ、これ!」
「まだ買い足りるぞ!」
「十分だ、行くぞ」
ドラコは振り返りざま、ミラにだけ聞こえるように低く付け加えた。
「――仮面がいつ外れるか、見ものだな」
そう言って、クラッブとゴイルに合流し、三人は人混みの中へ消えていった。
残されたミラは、噴水の水面を一度だけ見つめ、ゆっくりと息を吐いた。屈する気はなかった。ただ――胸の奥で、静かな波紋が広がっていた。