第56章 ホグズミード村
「----ドラコには感謝してるよ。もしあの紙がなかったら、ここには一生来れなかっただろうし」
「その割には、楽しんでいるようには見えないな」
図星を疲れて、ミラはドラコを睨みつけた。ハリーがいなくて落ち込んでいることを分かっていて、わざと言っているからだ。
「理不尽だと思っただけだ。ハリーが住んでいるあのマグル達を知れば----」
ミラはしかめた顔を無理やり辞め、ため息を吐いた。こんな愚痴をドラコに言っても、ハリーがホグズミードに来られるわけじゃない。
だがドラコは、その一瞬を見逃さなかった。
「へえ……」
口元に、嫌悪と愉悦が入り混じったような笑みが浮かぶ。無遠慮にひと一人分開けた距離に、ドラコも噴水の淵に腰掛けた。
「やっぱりマグルが嫌いか。話を聞けば、虫を見るみたいな顔してる」
「……」
「ますます分からないな。お前がどうしてグリフィンドールに入れられたのか」
ドラコは肩をすくめ、意地悪く続ける。
「そんなにマグルを嫌ってるくせにさ」
ミラは何も言わず、ただ静かにドラコを見据えた。アメジスト色の瞳は揺れていない。怒りでも、否定でもなく――ただ、真っ直ぐだった。
その視線に、ドラコは一瞬だけ言葉を失い、すぐにフンと鼻で笑った。
ドラコは噴水の縁に腰掛けたまま、指先で紙袋を軽く揺らした。中身がかすかに音を立てる。
「----いつまで、マグルに優しいふりができるかな」
ミラは瞬きひとつしなかった。
「グレンジャーやウィーズリーたちが知ったらどう思う? お前が、心の底ではマグルを嫌ってるってことをさ」
ドラコの声には、明らかに楽しんでいる響きがあった。相手の反応を待つように、薄い灰色の瞳がミラをなぞる。
「失望するかな。それとも、怖がるかな。----ポッターはどうだろうな?」
だがミラは視線を逸らさない。背筋も崩れず、噴水の水音の中で静かに答えた。