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【HP】怪鳥の子

第56章 ホグズミード村


 ホグズミードの通りは、まるで時間そのものがゆっくり流れているかのようだった。何百年も前からそこにある石造りの建物は、壁に苔をまとい、窓枠や扉は長い年月で黒ずんでいる。歪んだ屋根や低い天井の家々が肩を寄せ合うように並び、細い路地は大人でも肩をすぼめなければ通れないほどだ。

 その古びた街並みに、ハロウィーンの装飾が不思議とよく馴染んでいた。古い街灯にはカボチャ型のランタンが吊るされ、割れたように見える石畳の隙間には、落ち葉が溜まっている。風が吹くたび、乾いた葉がくるくると舞い上がり、まるで幽霊が通り過ぎたかのように足元をかすめた。

「ハロウィーンって感じだな……」

 ロンが感心したように呟き、巨大なカボチャの山を指差した。ハニーデュークスのショーウィンドウには、カボチャ型のチョコレートや、幽霊を模した砂糖菓子が所狭しと並び、生徒たちの笑い声が通りに弾んでいた。
 ハーマイオニーは落ち葉を踏みしめながら歩き、飾り付けを一つひとつ観察している。

「どのお店も興味深いわ。本で読んだら、ここは魔法使いだけが暮らしている村だそうよ」

 二人の会話を聞き流しながら、ミラはゆっくりと歩いた。オレンジ色の旗や、風に揺れる黒い布飾りが視界を流れていく。楽しげな景色のはずなのに、胸の奥には、ひんやりとした空洞が残っていた。

(今ごろ、ハリーは……)

 無意識に浮かんだ名前を、ミラはそっと飲み込む。今日はハロウィーンだ。暗いことを考える日じゃない。せめて、笑顔でお土産を選べるくらいには、楽しもう。
 そう決めて、ミラは前を向いた。
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