第56章 ホグズミード村
そしてハロウィーンの朝、とても気持ちのいい目覚めとは言えなかった。
着替えを済ませて姿見で自分の姿を見ると、浮かない顔をした自分と目が合った。くたびれたカーディガン、色褪せたジーンズが、更にそれを助長しているように見えた。散らかった髪の毛をブラシで梳かすと、スルリと滑りのいい髪の毛になった。
髪の毛はもうすぐ腰に届くほど長くなっていた。
それを黒の輪ゴムで一つに縛り、パチンと両手で頬を軽く叩く。
こんなつまらない顔をハリーに見せたくない、そんな気持ちで朝食に向かった。
「ハニーデュークスから、お菓子をたくさん持って来てあげるわ」
「ウン、たくさん」
心底気の毒そうな顔をしたハーマイオニーと、それに合わせてロンも言った。二人は流石にハリーの落胆ぶりを見て、クルックスシャンクスについての喧嘩は一時休戦したようだ。
「ハリー、何か欲しいのある? ----あ、インクとか足りてる?」
「僕のことは気にしないで、パーティで会おう。楽しんで来て」
それが、ハリーが精一杯に普通を装いっているのだと、ミラには気が付いていた。
ハリーに玄関ホールまで見送られると、管理人のフィルチが長いリストを持って名前をチェックしていた。行っては行けない物が抜け出さないように、一人ひとり疑わしそうに顔を覗き込み、念入りに調べていた。
ミラはハーマイオニーとロンと一緒に歩いて城の入り口を出た----しかし、足取りは重く、一歩進むごとに沼に足を取られているような感覚がした。ハーマイオニーとロンが先へ進む中、ミラはふと立ち止まった。
「わたし…やっぱり残るよ」
「あ、ミラ…!」
ハーマイオニーが引き止めるよりも早く、ミラは城の入り口へ引き返した。管理人のフィルチが怪訝そうにミラを見るが、他の生徒がミラとハリー達の横を次々と通り過ぎると、すぐに仕事に戻っていった。
「ミラ、何か忘れたの?」
ハリーが尋ねた。ミラは首を横振って、まっすぐハリーを見つめた。