第24章 鳥かごは無色透明《後編》 ◉鷹見啓悟※
手帳に挟んだ新幹線のチケット、はらりと落ちたそれに私は慌てて手を伸ばす
金曜の放課後、クラス担当の女性から提出された書類に承認印を押し記録を終えると、私は大きく伸びをした
書類に記載された素敵な名前に思わず笑みが溢れる
彼女とは今週、ほぼ毎日お昼を一緒にとっていて
保健室裏に猫ちゃんが集まる日があるとさり気なく伝えると、彼女はその綺麗な瞳をきらきらと輝かせていた
「・・啓悟くんは、きっとまだ会議中だよね、」
今日の議題は無事に承認されただろうか、眠るのが逆に怖くなってきたと語っていた目良さんの顔が浮かんで、私は申し訳ない気持ちになる
「時間外に悪いな、今ちょっといいか」
静かな音とともに開けられたドア、隙間から覗いた相澤先生が室内を一瞥する
誰も居ないことを確認した様子の彼は部屋に入ると、後ろ手に扉を閉めた
「どうかされましたか、?」
「ああ、此処に来る必要があってな」
珍しく言葉を選ぶように発されたその声に一週間分の疲れが感じられる
生徒たちにとって今はとても大事な時期だ、きっとまともに眠れていないのだろう
保健室に来る「必要性」、それはきっと治療か休息を指していて
「もしかして今日、猫ちゃんの日ですか・・?」
「違う」
ガシガシと頭を掻いた彼が深く息を吐いて、ゆらりと私に近づいた
「・・悪いが、ちょっと付き合ってくれ」
低いその声が耳元で響くと同時に強く引かれた腕、声を出す間もなく投げ出されるように倒れ込んだのは白いシーツの上だった
「せ、先生、なに、を・・っ」
ギシ、と音を立ててスプリングが軋む
思い切り押さえつけられた手首が清潔な白に沈んで、私は目を見開いた
「こんな事したくは無いが」
売られた喧嘩を買う事にしたよ、意味深に呟いた彼が体重を掛けるとまた音を立てたベッド、
躊躇うことなく近づいた彼が私と一瞬鼻先を触れ合わせる
「あい、ざ」
「少しこのままで」
我慢してくれ、すぐに終わる、遮るように重ねられた言葉が私の混乱を加速させる
個性「処方」、触れ合った額から流れ込んできた彼の健康状態が私を確信へと導いた