第9章 たまには君から
「すごい、こんなに大勢でやるんだね!」
会話を楽しむ多くの声がホールを埋め尽くしている、柔らかな紅色の絨毯に足を取られるたび彼女が俺の腕にしがみついて
「慣れてなくてごめんね、」
いつもより高いヒールを見遣った彼女が申し訳なさそうに笑って、他の男にエスコートなんぞさせてたまるかと俺は眉を顰める
「人混みも酔っ払いも嫌いだ」
「ふふ、早めに帰るから怒らないで」
入場早々に悪態をつくと、腕を絡めた彼女が微笑んで俺を見上げる、暖色の照明が艶やかにその姿を照らして俺は口を噤んだ
「ヘイヘイヘイ!イレイザーとめぐじゃねぇか!」
一際通る声と目立つ髪型、会場の奥から駆け寄る見慣れた顔すら、いつもと違う雰囲気を放っている
「今日のめぐはこれまた一段とビューティフォー!!エレガント!スーウィィイート!!」
「ふふっ!ありがとう」
「夜空の満天の星たちも、今宵の君の輝きには敵わないぜェ?」
「山田くんもとっても素敵だよ」
俺より多く褒めるな殺すぞ、しっかり顔にそう書いていつもと違うグラサンを睨みつける
相変わらずペラペラと褒め続けている山田が俺を見て盛大に吹き出した
「後ろの殺気立った野獣さえいなけりゃ!会場中の紳士たちが君に声かけるの間違いナシィ!」
「るせえ、あっち行け」
「あら、なかなか絵になるじゃない」
不機嫌全開のまま振り返ると、香山さんがにやにやと人の悪い笑みを浮かべている
予想通りのド変態なデザイン、目のやり場に困る過激なドレスが会場の視線を集めて
なんでこうも、目立つ奴ばかりが・・
「めぐ、とーっても素敵よ!あとで一緒に回ってくれるかしら?スポンサーたちにあなたを見せびらかさなくっちゃ♫」
香山さんに集まる視線がそのまま彼女にも浴びせられるようで、俺は威嚇するように二人の間に入った
「私のセレクト最高だったでしょう?」
呆れたように薄笑いを浮かべたその声、すれ違い様の自信に満ちた言葉に舌打ちを響かせる
「スリットが無ければ完璧なんですがね」
「あれくらいイイじゃない、つまんない男ね」
あの晩には気づかなかった深いスリット、歩くたびチラリと覗く脚に男共の視線を感じる気がして、念のため持参した捕縛布を持つ手に力が入った