第8章 いい写真だろ
あぁ、結局徹夜だ
それに昨日の晩もかなり無理をさせた、そろそろ頻度をコントロールしないとあいつの身体がもたないな
いつも通りに重い足取り、視界に入る黄色も同じように草臥れて見える
ったく、ガキか俺は
ろくな二十代を過ごしてないもんで、なんて何の言い訳にもならないことを考えつつ辿り着いた教室
毎度の事ながら予鈴が鳴った後とは思えない騒がしさに大きな溜息を吐くと、どうにか手に力を込めた
「席につけ、ホームルーム始めるぞ」
「薬師先生のあの柔らかそうな身体、超エロいよなぁ」
「そんで夜な夜なあの細い腰でよォ・・」
寝不足とは言え我ながら無駄のない布捌き、冴えた音を響かせた捕縛布が上鳴と峰田を締め上げる
「「グ、グヘッ」」
「・・お前ら、朝から元気で何よりだ」
先ほど耳にした聞き捨てならない台詞に、締め上げる腕にギリギリと力を込める
年頃とは言え、朝からこんなにも不愉快な思いをさせられるとは
見せしめの効果あってか、しんと静まり返った教室
だがいつもとは僅かに異なる雰囲気に俺は生徒たちの顔を見渡した
「何だ」
(おい瀬呂、聞けよ!)
(何で俺!?こういう時は委員長だろ!)
ひそひそと聞こえるくだらないやり取りに苛立ちが限界を迎える、バンッと音を立てて教卓を叩くと静かに飯田が手を挙げた
「相澤先生!皆を代表して質問しても良いでしょうか!」
「くだらない内容であった場合、昼休み返上で基礎体力訓練を行う」
一斉に青くなる全員の顔色、質問が授業とは無関係であることは一目瞭然
睨みをきかせながら目で合図をすると飯田は腹を括ったように息を吸い込んだ
「薬師先生がご結婚されたというのは事実でしょうか!」
「質問の根拠は」
「上鳴くんが今朝、左手の指輪を確認しました!」
一蹴するはずが予想外の質問、僅かな狼狽も決して悟られないよう声を落とす
青くなっていた筈の面々が興味に勝てずに目に輝きを宿し始めて、俺は頭痛が酷くなるのを感じた
「昼休みの集合場所は後で伝える」
悲鳴に混じる抗議を視線で黙らせ溜息を吐くと、手足をばたつかせた芦戸が喚き声をあげた
「お願い!!筋トレはやるから!先生ぇ!」
「そうっすよ!筋トレやるから教えて下さいよ!」