第8章 いい写真だろ
「おい、みんな!!超ビッグニュースだぜ!!」
俺やっべぇ事に気づいちゃったのよ!、興奮気味に話すその姿に、がやがやとした教室を一瞬の静寂が包む
「どうしたの上鳴ちゃん」
「なんかあったのか?」
「なぁになぁにーー?!」
予鈴はとっくに鳴っているぞ!、そう制する声も同時に響いたが誰一人気に留める様子は無い
視線を浴びながら座席に鞄を置くと、数分前の記憶を思い起こし思いきり息を吸い込んだ
「保健室の薬師先生がよ!今朝左手の薬指に指輪してたんだよ!」
先週はしてなかったよな?!
顔の前に掲げた左手、薬指を大袈裟に指差すと皆の視線が集まって
当たり前に何もついていないそこを凝視したいくつもの目が同時に大きく見開かれた
「「「ええええ!!?」」」
「上鳴!それホントなの!?」
「マジマジ!見間違いとかじゃねェよ!」
きゃあー!、芦戸と葉隠の黄色い声が上がると同時にがっくりと項垂れる、どさりと座り込んだ固い椅子はいつも以上に無機質に感じて
「俺すっごいショック・・!今度メシ誘おうと思ってたのによぉ」
薬師先生ってさ、綺麗で、優しくて、いやちょっと可愛い系も入ってねぇ?、横を向いて熱弁すると耳郎と瀬呂が大きく頷いた
「まァね、分からんでもない」
「わかる、女のウチでもお嫁さんにしたいもん」
うんうんと同調する二人の向こうに石化した峰田が見える、態とらしく目を閉じている常闇は心を落ち着かせているのだろう
「・・白衣の天使、純潔の契りは幻」
「何言ってんの常闇」
「み、峰田くん大丈夫、?」
耳郎のツッコミに重なった緑谷の声、くだらないとでも言うように窓の外を見遣った爆豪が大きな舌打ちを響かせた
「薬師先生ってこないだまで病院にいたんやんねぇ?!」
「お医者様とご結婚かもしれませんわね!」
「いや、案外マイク先生とかだったりして!」
「「無い無い」」
朝の日差しが差し込む教室、時折ガタンと机や椅子が音を立てる
きゃあきゃあと止まない楽しげな声に掻き消されて、廊下を引き摺られる寝袋の微かな音に気付いたのは委員長一人だけだった
「人妻には人妻の良さが・・あるんすよ」
「あ、峰田起きた」
「無理矢理ポジティブに捉えてるな」
「一理あるぞ峰田!むしろ魅力アップ的な?!」