第9章 婚約者は誰?
「悟くん、もっと地味なのでいいよ、こんなの五条家で着たら目立っちゃう。それにあたしあまりお着物の良し悪しとかわからないの」
「振袖に地味とかねぇーだろ、気にせず選べよ。けど夕凪の事だからそんな事言うだろうなっては思ってた。なぁ、呼んでいい?」
「誰を?」
「オマエを溺愛してる奥様をだよ」
「はー!?」
ヤバいヤバい、悟くんがおかしい。やっぱりおかしい。溺愛も意味わからんけど、その前にこの状況を、一体どう説明するの?
プレゼントだっていうのがバレたらさすがに問題ありでしょ。使用人の娘になにあげてんの? って。
悟くんが携帯を閉じた。もう連絡したみたい。今から来るって言う。ちょ、情報が追いつかない。どうしよ、どうしよう。
「ねぇ奥様はあたし達のこと知ってるの?」
「さぁどうだろ。そんな話、しねぇから」
「絶対変だよ、ハワイの件もあるしバレてるよ」
「だとしても、特に問題ねぇだろ?」
その感覚が問題ありだって! しばらくすると背後に人の気配を感じ、振り返る。
「なぎちゃん、飛んできちゃった!」
「ひゃ!」
あまりに満面の笑みで現れた奥様に驚いて、変な声が出てしまった。無邪気にはしゃいでらっしゃる。なんで? ここはあたしが咎められるとこでしょ?
「あの奥様、これはあたしが自分で作るお着物で、悟さんは関係なくって」
「あら、誕生日プレゼントじゃないの?」
……。
すでにご存知だしーー!!
悟くんに目配せしたら「さっき電話で話した」って言う。開いた口が塞がらない。あたしの心配なんて気にもしてない。さすがにこれは付き合ってるのバレたよ!
それでも奥様は何もそれについて言ってこない。息子に高価なもの買わせて婚約者も決まってるのになんて小娘なの! って罵倒されるかと思ったけど、着物を一緒に見立てる事が嬉しそう。さっぱりわからない。