第9章 婚約者は誰?
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誕プレは誕生日当日には間に合わないっていう。術師の任務も忙しいんだろう。このところたくさん祓ってるみたいだ。
ようやく悟くんの時間が取れたみたいでメールが来る。その誕プレのために来てっていうんで、待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所に着くとタクシーで移動する。降りた先は……数寄屋造りの建物。見るからに老舗っていうような暖簾が店先に掛かっている。
「ここは……」
あたしが言葉を発する暇もあたえず、悟くんは暖簾をくぐろうとするから慌ててついていく。くぐった先には待ち受けていたように店主がそこに居て「いらっしゃいませ五条様」と悟くんに深々とお辞儀をする。
ここまで来てこの商家が何を販売している店なのかようやくわかった。衣紋掛けに立派なお着物がたくさんかけられているのが見える。
反物がたくさん和箪笥に並べられている。どうやら五条家とは長い付き合いの問屋さんで江戸時代から続いているらしい。
店主は身を屈めながら丁重にあたしたちを畳の部屋まで案内し、しばらくするといい香りのお茶を出してきた。「いくつか品をお持ちします」と言ってまた部屋を出る。
「悟くん、まさか誕プレって」
「もうわかっただろ? オマエずっといつも奥様に借りるの申し訳ないとか言ってたじゃん」
「言ったよ、言ったけど、まさかお着物なんて!」
今にもひきつけおこしそうになる。そんなものくれる10代彼氏いる? 規格外すぎない?
「嬉しくないの?」
「嬉しいよ、ジャンプしたいくらい。けどここじゃ飛べないでしょ」
「まぁ」
「あとこう見えてかなり驚いてる。けどここじゃマジでぇぇええ!? とか叫べないでしょ」
「まぁ」
目が合ってくすって笑う。そうこうしているうちに店主が戻って来た。反物をいくつか並べて広げる。豪華絢爛な美しすぎる眩しすぎる反物ばかり。
「悟くん、ほっんとにいいの? いつか自分で買おうとは思ってたけど、こんな高価な物いただいちゃっていいの?」
「好きなの選べよ。どれでも買ってやるよ」
彼女に着物なんて……。婚約者をさしおいて貰っていいのかな? と思いつつ広げられた絵巻物みたいな反物の数々に目を奪われる。