第9章 婚約者は誰?
時はどんどん流れて行き、冬が終わり春になる。婚約の儀は少しずつ近づいているはずなのに、いまだ婚約者が誰なのか? 悟くんはそれに従うのか? あたしたちに明かされていない。
遺言の内容が、婚約者が悟くんに開示されたなんてまるで嘘みたいに悟くんはこれまで通りあたしと接する。
◇
5月。学年は高専3年。18歳の誕生日が近付いて来た。誕生日を前にしてもう一度、悟くんに確認する。
「婚約者のことは本当にいいの? こんな風にまだあたしと付き合っていて大丈夫なの?」
「問題ないって何回も話してるだろ」
「悟くんにとって不利な状況にならない? もしそうならあたし――」
「ならねーから。それよりオマエの誕生日だけど、欲しいもんとかねぇーの?」
話題を変えられた。欲しいもの、誕生日プレゼント。遺言が開示された後も変わらずあたしと付き合って、誕生日プレゼントまで考えてくれてる。
本当にどうなってるんだろう? だけど何回聞いても問題ないっていうんだから、悟くんを信じるのみだ。
「欲しいもの……すぐに思いつかないんだけど」
「じゃあこっちで勝手に考えるけどいいよな」
「うん、考えてくれるだけで嬉しい」
「考えるだけじゃだめだろ」
「そんな事ないから」
「それはプレゼントじゃねーだろ」
「……もうやめよう、また喧嘩んなる」
こうやって時々言い争いになるのも変わらない。遺言なんか実はなかったりして、全部嘘だったりして、なーんて思う事もある。
「まぁ楽しみにしとけよ」
「うん、そこまで言われると気になって仕方ないよ」
上からもの言うみたいに偉そうにしてるから、なんだろなって思ってたら、それはほんとにビックリ仰天な誕プレだった。
そして、それをきっかけに、あたしの妄想が浮上して離れなくて、頭の中がそれでいっぱいになってしまうことになる。