第9章 婚約者は誰?
「ってことで、行ってくるから」
え、そんだけ? そんだけなの?
いくら純粋無垢そうな奥様とはいえ、少しは勘繰るでしょ。荷物持ちなんてどう考えても嘘くさいじゃん! 身の回りのお世話っていったい何のお世話? ふふって思われてない?
「行ってらっしゃい。お土産は蜂蜜で。えーっとなんだっけ」
「レアハワイアンオーガニックホワイトハニーだろ?」
「そうそう、それ。よろしくね」
ん?
なんのお咎めも質問もなく、あっさりと奥様から許可が出た。奥様は驚く様子もなく息子とハワイ話にお土産に盛り上がっている。え、そんなノリ? 悟くんとあたしと2人っきりですよ。
「あの奥様……」
「気をつけてね。悟、なぎちゃんガードしなさいよ。海外は危ないんだから」
「最強と行くハワイほど安全なもんねーよ、なぁー夕凪? ほら行くぞ」
「え、あ、うん。あの、失礼しました」
悟くんに引っ張られるようにして奥様の部屋を出た。何も言われないなんてどうなってるんだろう。婚約者のことは奥様も遺言の内容をご存知のはず。あたしが悟くんと近付くのは面白くないんじゃないかと思うんだけど。
悟くんも奥様もまだ婚約の儀は先の事だと思って呑気にしてるのかな。お相手は誰なんだろう? 悟くんはご家族と婚約者についてどんな話をしたんだろう? 明かせないと言われてもやはり気にならずにはいられない。
五条家に警告を受けるんじゃないかと懸念していたハワイ旅行は何の問題もなく実行され、あたしたちは3泊5日のハワイの旅を目一杯楽しんで、悟くんは奥様だけじゃなく当主にもお土産を買って帰国した。
――ってことは、当主もこの旅行を知ってるの? 大丈夫なの?